南瓜の馬車 〜いいわけでも許して〜

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ヘッドホン祭2016 秋 に行ってきた

ここのところポータブルオーディオ機材はすっかりと落ち着いてしまっているのでちょっと悩んだのだけれど、「ヘッドホン祭2016 秋」に行ってきた。まあ、年に数回のイベントでもあるし、一度にまとめて色々と聴けるというメリットもあるわけだから。

CW-L12a/L12aEX

最初のお目当てはカナルワークスから新しく発表された「CW-L12a」と「CW-L12aEX」。そもそもノリの良さとスッキリ感で元々「CW-L12」は好きな機種でもあった。その違いは発表記事を見た方が良いだろう。

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いくつかの曲で試聴してみたところ、「CW-L12」に比べるとエッジが取れて大人しくなった感じがする。その分、元々あったドンシャリの楽しさが若干スポイルされているように感じる。ただ、2ドラのスッキリ感はそのままで、その分音数の少なさは感じるものの、この機種の良さは残されていると感じる。むしろ、「品が良くなった」とも言えるんじゃないだろうか。EXは、「より高品位に」とあるが、比較してみて少し明瞭さが増して楽器が良く見えるようになったかな?くらい。それも何度も聴き比べてみてだ。価格差を考えれば選択肢としてはEXなのだろうが、12aでも充分だと思う。その分をオプションに回すという選択肢もあると感じた。

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それとついでにフラットでお気に入りの「CW-L52」を聴きつつ、L12の延長線上にあると感じる「CW-L33LV」も改めて聴いてみた。

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これはこれでなかなか良い。CW-L12aの直後に聴くと、そのノリの良さをそのままに、中域の密度を増した音。そして音数を多くし、音場を広くした感じがする。L12aのようなスッキリ感は多少薄れるが、高音質(もちろん音はそれぞれの好みだ)だと思えるのはこちらだろう。難があるとすれば低域の量感がかなり増す。これが好きだという人は多いだろうが、僕はむしろ苦手だ。しかし、こういう音を出すカスタムIEMは少ないと思う。個人的にはL52のようなフラットな音作りの方が好みだが、L33LVのノリの良さも捨てがたい。カナルワークスの製品は価格帯もそれほど高いこともなく、単純に多ドラを追求せず、音のバリエーションを増やすところに好感が持てる。それに、低価格帯で質の良いカスタムIEMを出してくれるところが良い。一度使えば、あの耳穴に押し込むようなカナルタイプがいかに不快なものだったのかが分かるだろう。これからも頑張って欲しいと切に願う。

64Audio Aシリーズ

その他、ほとんどのカスタムは聴いているハズだが、ADEL機構が「風切り音がする」とのことでapexとなった64Audioも聴いてきた。とても残念なのは、バリエーションの中からA5が削られたことだ。一番好きだったのだが・・。で、今回聴いてみて、買うのならどれか?と考えると、A6かなと思う。やはり多ドラの暑苦しさは苦手なところは変わっていない。

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apexはADELと機構的には同じなのだろう。鼓膜を守るためのダンパーと理解しているが、そのせいかそれとも他の要素かは分からないが、音の立ち上がりのエッジが柔らかくなっており、音場が広く感じる。それはどのモデルでも同様で、逆に言うと昔のVシリーズにあった機種毎の個性が少なく感じるのは残念なところでもある。残念と言えば価格もかな。この分野はやっぱりニッチなのだろう。オーダーメイドされた品質の高い機種が高価になるのは当たり前なのだが、それでもちょっと即決は難しい価格帯になってしまったと思う。それはJH Audioや他の海外メーカーでも同様なことが言えるし、SonyのJust Earや須山のFitearでも同様なのだとは思うのだが・・。

Sony Just Ear

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そうそう、今回はタイミングが良かったのか、待ち行列が無くてそのSony Just Earも聴くことができた。薄く青みが掛かったシェルは美しい。ダイナミックドライバを積むために特徴的な外側の穴の開いたパネルが実に美しい。カナル部分の体温で柔らかくなるという素材も含めて、「Sonyらしさ」のある製品だと思う。肝心の音は「モニター」「リスニング」「クラブサウンド」3種類が用意されている。最初に感じたのは、Sonyというとブーミーな低域・・という先入観があるのだけれど、この機種は割と締まった低域を出す。「クラブサウンド」はそれなりに量感があるのだが、この低音は好きなタイプの音だ。ハイブリット機種がユニーバーサルで発売された頃は、その調教に失敗したような音が好きになれなかったが、流石は値段だけのことはある。高域が少しギラつく感じはするが、悪く無い。まあ、値段に対してどうか・・と言われたらちょっと購入を躊躇うのは確かなのだが、もし僕が買うのなら「モニター」だろう。

Sennheiser HD599

今回の2個目の目当てはこれ。現在、家にオープン型のヘッドホンが無いのである。なので、これがとりあえずの購入候補だ。

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そう、見て分かる通り、通称「プリン」ことHD598の後継機種とみて良いだろう。だが、試聴機はまだあまり鳴らしてない印象で、ちょっと音に雑味を感じる。しかし、音は紛れもなくSennheiserの音だ。

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単純に音の好みだと、あくまで今回の試聴機の中では「HD579」の方が高域の伸びが良く、締まった低域とで全体的にバランスの良い音を出していたと感じた。この辺はもう少し鳴らしてみないと分からないだろう。

とても残念なのは、プリンにあった高級感が無くなったこと。あの車のウッドダッシュボードのようなヘッドバンドや、本体の色の深みが無くなり、少し安っぽくなってしまったと感じた。それでも価格帯を考えれば、オープン型では個人的な第一選択になる。もう少し市場に出回ってから再度試聴してみたいと思う。

また、同じオープン型で興味があったのは、ONKYO A800。まだ価格も発売時期も決まっていないということで、最終的に出音が変わってくる可能性もあるが、現時点での音を聴いてきた。

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正直に書くと、まだ製品版としての完成度が低いんじゃないだろうか。オープンとしてはそれほど音場を広く感じ無いし、高域が少しノイジーに感じた。ただ、説明員の方の話しだとまだまだこれから熟成させる部分はあるとのことで、今後に期待したい。

Sony NW-WM1Z/1A

さて、最後がSonyの新たなフラグシップDAPだ。

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まず手にして誰もが思うだろう。「重い。メッチャ重い。」重量は分かっていたが、実際に手にしてみると想像以上に重い。455gとのことだが、1kg近いんじゃない?と思えるほど。しかし、出音はDACやアンプだけではなく、筐体やアナログ回路設計でも大きく音を変える。その辺を意図したものだろう・・と思いたい。

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で、最初に自分のmicroSDを刺そうとしたら「musicフォルダーの下に曲が無いとダメです。」と言われたこともあって、自分の手持ちの試聴曲で試せなかったのが残念。仕方がないので内蔵の曲から自分も試聴用に入れてあるMichael Jacksonの「Beat It」で聴いてみた。

なんというか・・SonyのDAPとSonyのイヤホンで聴いたような音・・って・・まんまだが、所謂、弱ドンシャリの「Sonyが言うところの分かり易いと感じる高音質」だ。実はあまり好きじゃない。ただ、Just Earでも感じたように、低域のブーミーさはあまり感じ無い。量感はやはり多いが良い感じに締まった低域だ。無酸素銅に金メッキを施した1Zと、アルミ筐体の1Aを聴き比べてみたが、ほとんど違いを感じ無い。正直に言えば、こういうところで商品の付加価値を上げる戦略では?と思える。それはそれで間違っているとは思わないが、その値段差を考えると個人的にはアルミ筐体で充分だと感じた。

僕が考えるのは、まずは自分の好きな音を出すイヤホン/ヘッドホンを決め、それに合ったDAPを選ぶのが良いと思っている。その他の条件としては「使いやすさ」と「あくまでポータブル」であるというところだろうか。ポータブルだからと言って好みの音への妥協はしたくないが、それでもデカくて重い筐体に、更にアンプやらを多段に積み上げて雑踏に出ることは個人的に方向性が違うと感じている。もちろん、それも「人の好み」なのは分かっているし、その上で自分が目指すものが手に入るのならそれで良いだろう。ただ、僕自身はそれは苦行でしかない。それが今の手持ちの機器での回答でもある。

まとめると

総じて、今回はあまり目新しさを感じなかった。DAPもいくつか聴いたが気に入ったのは「Cayin i5」だろうか。N5やN6の音も割と好きだったが、それを更に精細感を上げ、まとまりを良くしたような印象だ。

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ただ、個人的にAndroidが好きじゃない。UIもまだまだ練り直さないといけないだろうなと思う部分もあるが、僕はそもそもOSとしてのAndroidが好きじゃないのだ。一時期、Androidアプリの開発における試験に関係した仕事をしていた時期があるのだが、その時にこのOSの未完成さや、アップデートポリシーに辟易(これはOSのせいだけではないのだが)していたということもある。なので、どうしても好きになれない。

でも、このDAPの音は好きだ。じゃ、今のX5 2ndよりも好きか?と言われたら、やっぱりX5 2ndの方が好き。これはもう特徴的なX5 2ndの音に慣れてしまっているという理由が大勢を占めるだろう。だから、他の製品が「音が悪い」というわけじゃないと思う。あくまで「好み」の問題であって、僕個人の問題だろう。

あぁ、もう一つ。僕はDAPはブラインドタッチで曲送り、曲戻しができて欲しい。そういう意味では押し易いところに物理ボタンが欲しいかなぁ・・と思うかな。

 

今回は、少し早めの時間に行ったせいか、割とたくさんの機種を試すことができた。それでも人はそれなりにたくさんいて、このエントリーを書きつつも、今は疲れでそろそろ横になりたい・・というのが本音である。ということで、ちょっとベッドへ行くのをご容赦願いたい。ではでは。