いやぁ・・まさかこういう展開になるとは・・。今回は第6戦、イタリアはムジェロサーキット。
とその前に、前のエントリーにも書いた移籍関係の情報が入ってきたので紹介しておこう。一番の注目はロレンソがYAMAHAを離れ、Ducatiへの移籍が既に報道されていたのだが、その空いたシートを誰が獲得するか?に話題が集中していた。
結果、大方の予想通りビニャーレスがSUZUKIからYAMAHAに。そして、なんとその空いたSUZUKIのシートにDucatiのイアンノーネが座ることになった。
- ロレンソ:YAMAHA → Ducati
- ビニャーレス:SUZUKI → YAMAHA
- イアンノーネ:Ducati → SUZUKI
ということである。個人的にはイアンノーネではなく、ドヴィツィオーゾかな?と思っていたが、そこはちょっと意外でもある。まあ、大型移籍であることは変わらないが。
序盤
さて、レースである。気が付かなかったのだけれど、ここ8戦連続でポールポジションを獲得したライダーがウイナーになるという状況だったららしい。今回のポールはホームグラウンドであるイタリア人のバレンティーノ・ロッシ。これは期待するなと言う方が無理だろう。
スタートは5番手のロレンソがロケットスタート。これはロレンソのいつものパターンか?というところだが、それにロッシが食い下がる。
1周目にバズ、ミラー、バウティスタが絡んで?転倒リタイア。
後方にはSUZUKIのエスパルガロ、マルケス、Ducati勢はイアンノーネがスタートで遅れたが、怒濤の追い上げ。流石、予選順位が良かったことはある。タイムは出ているのだ。
そしてそして。なんと、ロッシがまだ残り15ラップというところでマシンが白煙を上げてリタイア。
A catastrophic technical issue for @ValeYellow46 who is OUT of the #ItalianGP! https://t.co/6zQSVfcIcP
— MotoGP™ (@MotoGP) 2016年5月22日
解説によると、ロレンソのマシンもウォームアップラップで同様のトラブルがあったようで、YAMAHAのマシンに何らかの問題があることが予想される。このままロレンソはゴールできるのか?
中盤
SUZUKIは徐々に順位を下げ、HONDAも思うようにペースが上がらない。解説の福田氏も言っていたし僕も以前に書いたが、今シーズのHONDAは何か問題を抱えているようで、どうにも序盤で上位に来ることができないと思える。それが今シーズンのレギュレーションの変更によるものかどうか分からないが。
久し振りに解説席に着いた原田哲也氏が、ストレートで最高速を誇るDucatiが何故上位に入れないのか?という問いに「加速が大事」と言っていたが、これは、ブレーキングからリーン、旋回してマシンを起こして加速までの一連の動作によるものだろうが、HONDAにも同様の問題があるように思う。ブレーキングからリーンの速度、クリッピングからマシンを寝かしている時間が長い感じがする。うまく旋回できていないのだろうと想像する。その中でもマルケスはかなり無理してその辺をねじ伏せているように見えて、それが何とか上位に食い下がっている理由でもあるんじゃないだろうか?
そのDucati勢であるドヴィツィオーゾとイアンノーネも、序盤はドヴィツィオーゾがリードしていたが、イアンノーネがドヴィツィオーゾをかわすと、そのままドヴィツィオーゾはズルズルと後退していく。
終盤から結果へ
レース終盤になって、これはもうロレンソかなと思ったところに、マルケスの頑張りが凄い。やっと追いついてきたと思ったら、ストレートの終わりのブレーキングでノーズを突っ込むこと2度。もちろんオーバー気味のペースで膨らむところをロレンソが冷静にパス。しかしロレンソのステディさは凄い。なんとなく「ステディ・エディ」と呼ばれたエディ・ローソンを思い出す。
終盤になってマルケスとともにペースが上がってきたペドロサ。イアンノーネと激しい表彰台争いとなる。個人的に、ペドロサはどうもこういうシーンになると一歩退いてしまう感じがしたのだが、今回はイアンノーネが頑張っているという印象だ。
最終ラップ、マルケスがこのままでいるハズがない。解説の原田さんでさえ「あんなところでは仕掛けない」と言わせるS字コーナーど真ん中でゼブラゾーンに乗り上げてインを取り、前に出る。
To vote for #MM93’s overtake on #JL99 at the #ItalianGP, use #Overtake3! More▶ https://t.co/qEIAdLxaJq! #MotoGPBuzz pic.twitter.com/Er6L7H67Bo
— Motul (@motul) 2016年5月23日
マシンが揺れ、今にもロレンソに接触しそうな勢いだ。正直、ちょっと「怖い」と思った。これ、その昔「バリバリ伝説」で主人公の巨摩郡が4時間耐久のラストラップ、鈴鹿の130Rでイン側のゼブラゾーンに乗り上げるシーンを思い出す。それだけ「前に出たい」という強い意志の現れで、これはレースをやってる人間なら誰でも分かる心理ではある。しかし、それをやってのけるとなると話しは違う。あの重たいMotoGPマシンでそれをやってしまうマルケスの技術に脱帽だ。個人的にマルケスは昨シーズンの件であまり好きじゃないが。
しかし、ロレンソはやっぱり冷静だった。最終コーナーまでに前に出ようとはするが無理はせず、そのまま最終コーナーを立ち上がり、スリップストリームを使ってゴールライン直前で僅かにマルケスの前に出て優勝。
Edge. Of. Our. Seats. #ItalianGP pic.twitter.com/wsHxCuPgKF
— MotoGP™ (@MotoGP) 2016年5月22日
それもちゃんと計算されたレース運びの一部だというのが凄い。確かにこのコースではこういったシーンは以前にも何度か見た記憶がある。マルケスの「いちかばちか」的なアタックと違って、ロレンソの冷静でクールなレース運びはやはり素晴らしいと思う。
3位にはペドロサとの戦いを制したイアンノーネが表彰台を獲得。Ducatiとしては地元イタリアで一矢報いた格好だろう。
おわりに
終わってみれば、安定して冷静に走ったロレンソの勝利だと言えるだろう。マルケスは相当、無理をしたんじゃないかな?見ている方も怖いくらい。しかし、それがマルケスの持ち味でもあるのだろう。
しかし、ロッシのいないレースはやはりちょっと退屈だ。ロッシの走りはファンを魅了させる「演出」がある。もちろん、故意にではないのだろうが、ロッシのレースは「ワクワクドキドキ」がある。マルケスはどちらかというと「ドキドキハラハラ」だろうか?まあ、個人の感想だけれど。
ただ、ロッシが125ccに参戦していた頃は、今のマルケス並みに突き抜けていた。しょっちゅうコースを横断してアウトに吹っ飛ぶ姿や、ブレーキングで無理矢理ノーズを割り込ませる姿に当時は呆れたものだ。マルケスは「若い」ということでもあろう。
まだシーズンも半分も終わっていないけれど、ロレンソのDucati移籍が早々と決まったことで、ピットでは色々と影響があるのだろうなと思う。個人的にはビニャーレスがSUZUKIを離れたことが残念かな。開発の青木宣篤氏もさぞ肩を落としていることだろう。
次戦はスペインはカタルーニャ。2輪では抜きどころ満載のコースである。激しいバトルが予想され、今から楽しみだ。ちなみに、福田さんだけでなく、原田さんもペドロサのファンであるとのこと。僕?僕ももちろん125ccの頃からペドロサのファンだ。