さて、今年も楽しみなシーズンが開幕した。MotoGPである。昨年はロッシとマルケスの激しいバトルに色々と物議もあったが、イチファンとして、今年はクリーンなファイトを展開して欲しいところだ。
2016年のMotoGPについて
以前にも今シーズンの見所としていくつか挙げていたが、解説の青木宣篤氏と福田充徳氏との会話に出てきたところでもある、レギュレーションにいくつかの変更点について、リスタートの方法や規定エンジン数等の変更がいくつかあるが、特にレースの面白さと結果を左右すると思う点は以下だろう。
- タイヤがブリジストンからミシュランに統一
- 電子制御用コンピュータのソフトウェアがドルナ提供のものに共通化
また、個人的な見所としては下記。
- 復帰したばかりのSUZUKIを駆るビニャーレスがどこまで上位に食い込むか?
- 4強と言われるロレンソ、ロッシ、マルケス、ペドロサに新たに食い込むのは誰か?
- ロッシとマルケスの確執?やいかに?
- 日本人ライダーたちの活躍は?
今年も目が離せないシーズンとなりそうだ。
MotoGP序盤
第1戦は毎年恒例のナイトレースが、カタールのロサイル・インターナショナル・サーキットで行わる。全18戦で唯一のナイトレース。コンディションが他のサーキットとは大きく異なる点である。
今回の予選では長いストレートによりトップスピードが他車よりも15km/h(!)近く早いDucatiが案の定、上位に食い込む。しかし驚きはSUZUKIのビニャーレスがフロントロウだろう。青木氏をもって「天才」と言わしめた彼の走りに期待がかかる。
スタートから特にもつれることなく、Ducatiのビッグパワーを操るドヴィツィオーゾとペトルッチが上位に食い込む。しかしそれも束の間、昨年のチャンピオン、ロレンソはやはり強い。Ducatiの2台をかわすと後続とのアドバンテージをみるみる広げていく。それに比べ、6位争いのペドロサとビニャーレスが徐々に離されるいく。うーん、開発途上のビニャーレスは大健闘だと思うが、ペドロサは変わったタイヤとコンピュータのソフトウェアにまだ慣れていないのか?差は開くいっぽうだ。
MotoGP中盤
多少の順位の入れ替え、ペトルッチのフロントをすくわれるような転倒(解説にもあったが、夜露に湿った白線を踏んだ?)などはあったものの、そこそこ安定している。というか慎重になっている方が当たっているかも知れない。毎シーズンの第1戦と言うと、各社のマシン熟成にまだ時間がかかっていることともあり、マシンの挙動は比較的不安定になりやすい。現代のMotoGPはタイヤがスライドしている走行であることもあってか、各自が挙動を乱すほどのトライをしていなかったようにも思う。マシンをこじるような場面もなく、みな安定してコーナーに吸いこまれていく。うーん、もう少し激しさを期待してしまうが、最初は安全にポイント獲得ってところだろう。
また、面白いなと思ったのは、レース中の映像がまた進化している。各ライダーの順位と共に、ゴールラインを超えたタイミングのマーキング、加減速の状態やギヤの選択、速度の表示などがとても見やすい。レースを見る側の視点を邪魔せず、非常に見やすくなった。昨シーズンにはバンク角などの表示もあったことだし、まだまだこれから色々な試みがあると思う。いやー、レース観戦も変わったもんだ。
MotoGP終盤
ペトルッチの脱落と5位争いが離れることにより、レースは完全にロレンソがぶっちぎり、その後にドヴィツィオーゾ、マルケス、ロッシが続く展開。初戦のためか、レギュレーション変更のためか、相変わらず各車慎重な動きを見せる。唯一の見せ場らしい見せ場は、マルケスがドヴィツィオーゾのフロントに飛び込んだくらいだろう。彼らしいタイトな場面でのここ一番の度胸を試されるシーンだ。昨シーズンでもよく見るシーンであり、彼自身、それが楽しいと感じてもいるのだろう。
そしてレースは特に波乱も無く、ロレンソのぶっちぎりで終えた。彼によれば、タイヤ選択が明暗を分けたように感じる。彼だけがリアにソフトを履いていたからだが、彼自身も相当迷ったことをインタビューから窺える。しかし、まだまだ第1戦とあって、激しさを期待するものでも無いだろう。シーズンはこれからだ。シーズン序盤はまずは完走し、新しいレギュレーション採用と変化の多い中で、確実にデータを収集するのも大切なことだろう。
個人的にはSUZUKIにはもっとパワーと言うところだろうか。ペドロサと同等に走っている時点でただ者では無いのだが、予選結果を見ればもっと上位と均衡していてもおかしくない技量をビニャーレスは持っていると感じた。青木氏が「コーナリング中にスライドコントロールで外足を外しちゃう!」ほどのバランス感覚をも持っているらしい。今後に期待だろう。
Moto2 & Moto3
ここは唯一日本人が参戦しているクラスであり、期待が大きくもある。特にMoto2の中上貴晶は上位を狙えるライダーでもある。レースはセカンドロウから見事なスタートでトップグループに位置するも、残念なことにジャンプスタートとの裁定。結局14位でフィニッシュ、かろうじてポイントを獲得したが不本意な成績であろう。
本人のレース後のコメントを聞くところ、自分でもジャンプスタートかどうかは判断できないとしていた。彼によるとシグナルのレッドランプが消えるタイミングがかなり遅かったようである(いつもは3秒くらいが、今回は5秒くらいだった)。これはツラれるライダーも出るだろう。実際に中上を含む、計8選手がジャンプスタートとなった。奇妙なのはその扱いである。6名は一度ピットレーンに戻る「ライドスルー」、2名は20秒の加算だ。どっちが良いのかと考えれば、個人的には「ライドスルー」だろうか?おそらく20秒加算の方がタイムロスは少ないように思うのだが、ライドスルーの場合は走行中のポジションが実際の順位となる。走るモチベーションとして「前を追いかける」ことを考えると見えない敵と戦うような20秒加算は、精神的にハードだし、レース全体のマネジメントとして転倒の恐れが高くなるように感じる。まあ、トップレーサであればその辺はしっかりと管理できるだろうし、タイムロスが少ない方が良いのかも知れないが。
Moto3の日本人二人はなかなか上位に上がって来られない。マシンの性能の違いなのか、技術の問題なのか、体制の問題なのか・・おそらくはその全てだろう。今後に期待したい。
第1戦を終えて
「待ちに待ったシーズン開幕!」の一言だろう。移籍等の大きなニュースは無いが、レギュレーションの変更とSUZUKIの活躍に焦点が当たる。またとてつもなくトップスピードの高いDucatiに、日本メーカーとトップライダーがどうやって挑むのか?というところだろう。
熱いシーズンは始まったばかりだ!