南瓜の馬車 〜いいわけでも許して〜

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【ネタばれあり】映画:LOGAN これは「X-MEN」ではない。ウルヴァリン・・いや、ローガンの物語だ

 どうしてこんな表題での書き出しかと言うと、終わった後に喫煙室で若者がたむろしていて、割と酷評していたので。狭い部屋なので会話が聞こえてくるのだが、どうも「X-MEN」として面白く無い・・ということだ。だが、この映画はタイトルが示す通り、ウルヴァリンの生涯を締めくくる物語なのである。そこに齟齬があると、アトラクション的面白さはあまりない。

ミュータントがほぼ絶滅した2029年。永きに渡って生き続け、闘い続けたウルヴァリンことローガンの能力も衰えをみせていた。彼の「再生能力」が徐々に無くなってきていたのだ。彼は年老いて能力をコントロールできなくなったプロフェッサーと共に、リムジンドライバーをしながらひっそりと生きていた。ある日、ローガンの元に助けを求める女性と少女が現れる。少女の出自とは、そしてローガンの人生の行く着く先とは?

予告編を散々観ていれば、少女が某かの理由でローガンの血を引くミュータントであることは、当然分かっている。この物語は、ある意味「ウルヴァリン:X-MEN ZERO」と趣きが似ていないことも無いが、あちらは後半では兵器としてのウルヴァリンが全開で闘うアクション映画、こちらはウルヴァリン・・いや、ローガンの人生を描くヒューマン・ロードムービー的な感じである。

個人的には、今回の「LOGAN」が一番好きだ。この辺は彼の「ヒーリング・ファクター(というらしい)」という能力を除けば、人生の、そして家族の物語として観ることができる。最初は口をきかなかった少女、目的地にローガンと共に向かい、そして時にはギリギリで闘う中で家族としての感情が芽生え、最後にローガン自身の命が尽きることで「人として生きること」を実感として捉えることができたのではないだろうか。それが息絶える間際に「やっと分かった」と呟いた彼が、兵器ではなくヒトとしての生をまっとうでき、ローラという家族をも得たことによる喜びとして感じた。

最後にローガンの墓を建て、プロフェッサーと共にモーテルで観た映画「シェーン」のセリフである「生き方は変えられない」を主に唱え、そしてそれにローガンの父親としての言葉で「背負って生きろ」というセリフを重ねるところがシビれるしちょっと感動した。ものすごくコテコテのヒューマンドラマでないが、こういう雰囲気を持つ映画は好きだ。

ただ、注意点がひとつ。この映画、かなり残酷なシーンがある。当然、R15+指定が付いている。血がドバドバッ!と流れるようなシーンが苦手な方にはちょっとオススメできないかも。

全体的に、映画としてのまとまりが良かったなと感じた。アトラクションのX-MENも悪くは無いが、特別な能力を持って生まれてしまったローガンとローラの人生を描く映画として、個人的には充分楽しめた映画である。また、やはりX-MENの系譜に繋がる様々な小物もあったりして、それを探すのもちょっと面白いかな・・という側面も。そしてローラ役のダフネ・キーンが良い!なんというか、まさにローガンの血を引く者という感じ。キュートだし演技のキレがあって今後が楽しみな女優になっていく予感がする。

総じて、良い映画だったと思う。正直、あまり期待していなかった・・というのもあるのだけれど、もっとこう・・ドカドカなアクション映画だと思ったら、感動の映画だった・・という感じで、良い意味で裏切られた感が今も残っている。