南瓜の馬車 〜いいわけでも許して〜

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スピーディなアクションが痛快!(映画:亜人)

 コミックの映画化で話題となっている「亜人」を早速観てきた。 僕は当初からの「亜人ファン」でもある。

交通事故に遭い死亡した永井圭。しかし彼はその「死」から蘇る。彼は世界でも希にみる「亜人」であった。彼は国家から追われ、そして同じ「亜人」であり、「亜人の国家」を目論む「佐藤」とも敵対する。永井圭の運命は?

 結論から言うと、これは「アリ」だと思う。

映画化の時点で時間枠の関係からストーリーの微妙な改変はいくらでも例がある。この映画もそれは同様だ。細かく言えば、永井圭が学生から医科大の研修医になっていたり、佐藤の経歴が異なっていたりする。が、今回のそれは映画の出来具合として巧くハマっていると思う。

この映画「亜人」は、VFX/CGを駆使したスピーディなアクション映画となっている。CGのリアリティもそうだが、バトルシーンのアイディアなどが実に巧い。思わず唸るほど。これならコミック版の「亜人」を知っている人でも充分楽しめると思う。意表を突くアクションの組み合わせ、亜人とIBM(インビジブル・ブラック・マター。亜人が放出する黒い粒子のようなもので、不死の源であり、人型になって操作することもできる)との連携などがよく練り込まれていると感じた。実は、今回はIMAXではなく、通常の劇場で鑑賞したが、終わったあとに「しまった。IMAXで観れば良かった。」と思ったほどだ。

永井圭役の佐藤健は、個人的にも好きな俳優である。「るろうに剣心」や「この世から猫が消えたなら」で見せた、個性的で人間としての味わいを感じさせる演技が好きだ。ただ、今回の「亜人」ではどうか?コミック版に慣れている人からだと「常に合理的」であり冷酷にもみえる性格の永井圭とは少し違って見える。もちろんそれがいけないわけじゃない。そういう意味でも「アリ」。ある程度は合理的で冷たい人間っぽくは見えるが、どうしても温かさが出る。しかし、これは佐藤健の「味」でもあると思うから。

それから、コミック版が好きな人から見ると、アクション映画になってしまったことに不満を感じる人もいるかも知れない。映画のコピーでは「命を繰り返す」とあるが、まあ、死んでも生き返る不死身の人間・・ということで良いだろう。「命を繰り返す」というワードは刺激的だなとも思うが、コミック版では永井圭を取り巻く環境、そして彼の性格による行動の変化、そして佐藤やその仲間のバックグラウンドなどが奥深く、単なるスリラーとして見させない重さがあり、その部分が好きだ。特に、「死なないとはどういうことか?」を徹底して突き詰めようとしている部分に、この「亜人」の単なる娯楽作品以上の面白みがあると思う。

しかし、この映画版ではその辺はある程度そぎ落とし、アクションムービーとして割り切ったのが良い感じに仕上がったのだと思う。映画の約2時間という制限の中で、どの部分にフォーカスを当てるかで映画は変わってしまう。そういう点も加えての「アリ」である。細かく考えれば、どうして永井圭は最初からあんな銃撃戦ができるのか?とか、コミックでは描かれていた戸崎と下村泉の関係、友人のカイなどはバッサリと落とされている。その辺がコミックを読んでいない人からはどう映るのかなぁ・・?とは考えるけれど。

それにしてもIBMの動き、スピード感、そして演技陣との連携は本当に痛快だ。毎度書いているが、こういう映画は、是非、映画館で楽しんでもらいたいと思う。正直、あまり期待していなかっただけに、とても楽しめた映画であった。