南瓜の馬車 〜いいわけでも許して〜

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【ネタばれあり】よくあるネタ・・と思うなかれ(映画:君の名は。)

公開から多くの話題と、それに応じた興行収入を得た「君の名は。」をやっと観た。どうもこの手の映画は映画館で・・とはいかなくて、自宅でBlu-rayだ。

東京に住む立花瀧は、夢の中で岐阜県に住む宮水三葉と入れ替わっていた。しかし、それが夢ではなく、現実に起きていることを徐々に理解する。お互いの近況をスマホに残しつつ、それでお互いのことを知り得るうちに、いつしか二人は相手に対する感情を高めていった。その想いは、いつしか「逢いたい」と考えるようになったが、どうしても相手のスマホに繋がらない。実は、お互いの間には3年という時間の差があったのだ。しかもその頃の三葉は既に・・。

最初の印象は、「充分面白い」である。多くの人がこの映画の設定を「よくあるネタの組み合わせ」と感じるだろう。確かに僕も、「イルマーレ」「転校生」なんかのネタだなぁ・・と感じたのだが、それは所詮、舞台装置だ。映画は「なかなか出逢えない、二人の若者の恋心」や「自分の人生のために今できること」を伝えたいのだと思う。それをこの舞台装置で演出して見せたのはなかなか面白いのではないだろうか。そもそも、世にこれだけの映画があるのだ。舞台装置が似るのはある意味仕方がないだろう。今までにない新しいもの・・確かにそれは出会ってみたいが、なかなか出会いないのも確かだ。だからこそ、分かりやすく、ストレートに若者の心情と行動力を見せるこの作品には充分な魅力を感じる。

二人を紡ぐ組紐、隕石で消滅した街を救おうと奔走する二人、自分自身、こういった子供の頃にこれだけ必死に相手のために何かをしたことがあるだろうか?と考える。もちろん、それは単純に好きな人のため・・というだけではなく、多くの人の命が掛かっていれば当然なのだろうが、そのためにどうすれば良いか?と考え、ストレートに行動する姿に感心し、そして最後のシーンで生き残った三葉と東京ですれ違う場面では、思わず「グッとくる」のである。あまりにありふれた舞台装置であっても・・である。

映像的にも、日本のアニメの成長もスゴイなぁ・・と感じた。特に「光の表現」についてである。その辺はキャラクター以外の部分を限りなく実写に近づけたPIXER映画などとはまた違った趣きがある。宮崎アニメのように、その辺は昔の手法に則り、あくまで物語で魅せる作品とは違う部分での楽しみ方もできる。先日、「カーズ」のシリーズを購入して観て、映画館で最新作を観た。そして、家で「TOYストーリー」の第一作を観て隔世の感を抱いたのだが、映像はやはり「舞台装置の一部」であって、物語がよく出来ていなければ映画としては今ひとつなのだなと改めて感じた。それが捻った伏線回収のような込み入った映画だけではなく、メッセージ性の強い作品ではなくても、娯楽作品として万人に観られる映画を下に置くものではないだろう。面白ければ、素直に「面白かった」と言えば良い。映画解説者でもないだろうし。あれこれ「良くない理屈」を並べなくても良いだろうし、でなければ「トランスフォーマー」(「最後の騎士王」を劇場で観てきた)のような、ハリウッド・アトラクションも楽しめないんじゃないか?と思える。

とにかく、投資した分、楽しまなきゃね?と思うのは、僕らの世代の「もったいない」みたいなモンなのかなぁ・・とも思ったりして。まあ、世界的にもスマッシュヒットという結果も充分納得できる作品だったと思う。とにかく、あれこれ先入観を抱かず、とりあえず観てみましょう。