南瓜の馬車 〜いいわけでも許して〜

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【ネタばれあり】思っていたのと違った・・から悪いってわけじゃない(映画:ザ・マミー)

正直に言うと、トム・クルーズ主演映画はどれも「トム・クルーズ色」が圧倒的に強くて、似たようなテイストに少々食傷気味でもある。

が、今回の「ザ・マミー」は、「ダーク・ユニバース・シリーズ」として、往年のモンスター映画である「ミイラ男」「半漁人」「フランケンシュタイン」「ドラキュラ」「狼男」「透明人間」など、1920〜1930年代に制作された作品群のリメイク版(最近はリブートと言われるようだが)の先陣を切って公開された作品とのこと。もちろん僕にとってリアルタイムに観たものではないが、「誰もが知っているモンスター」に期待は大きく膨らむ。この当時はもちろん、この後に作られた多くの作品も、今のVFX技術でリメイクされたらどうなるだろう?とは多くの人が思うことじゃないかと。どうやら現時点で10作が既に公開/制作予定のようだが、いずれも子供の頃にテレビで放映された映画を観て、「こんな恐い怪物がいたら・・」と子供ゴコロに恐怖とある種の「恐い物見たさ」的な期待をいだいたものだ。

そして今回、トップを切って公開されたのは1932年公開の「ミイラ再生」をリメイクしたとされている「ザ・マミー」を、早速先週末に観てきた。 

古代エジプトにて、王位継承権を王妃の男子出産で剥奪されたアマネット。彼女は砂漠の護神である「セト」に魂を売り、王を殺害した罪で生きたまま別の地に埋められてしまった。そして時は現代のイラク。空爆により、偶然アマネットの棺を発見してしまったニック(トム・クルーズ)とクリス。アマネットは調査隊の生気を吸い取り、現代にその邪悪な姿を顕現させる。アマネットはセトを再び蘇らせ、この世界に王として君臨しようとする。

うーん、こんなところかな。この辺、僕が子供の頃に読んだ小説である「ミイラ再生」とはかなり趣意が変わるけれども、新しく制作される映画が昔の物語をなぞる必要もないだろう。ましてや主演はトム・クルーズなのだし。

で、見始めて最初に驚いたのが、「うわ。ラッセル・クロウ、激太りのオッサン」である。関係ないところですみません。(^_^;)

年代的にも僕と同じくらいだし、以前から友人たちに「あなたと雰囲気が似ている」と言われてなんとなく嬉しさ?みたいなものを感じたりもしていたし、もちろん以前から大好きな俳優なのだが・・なんて言うことを感じたり。しかも役柄が「ジキルとハイド」のヘンリー・ジキル博士だ!映画を観る前に事前情報を得てしまうと変な色眼鏡で観てしまうからと、予告すらまともに観ていなかったのだけれども、まさかジキル博士が出てくるとはビックリ。「ジキルとハイド」は、小学生の頃に小説で読み、確か何本か制作されたうちの2〜3作を観ているはずで(もちろん「リーグ・オブ・レジェンド」や「ヴァン・ヘルシング」は別として)、随分とイメージが違う。もっと、華奢で線の細い学者というイメージだったんだけれど、ラッセル・クロウのそれは知的ではあってもビジネスマンというか組織の重役であるとかそういう感じ。彼に組織の案内をされた折りに「半漁人」や「ドラキュラ」を連想させる標本などが陳列されていて、あぁ、彼がこのシリーズの語り部になるのかなぁ・・と思った。まあ、今回の本編ではあまり大きなキーとはならないのだが。

さて、「ミイラ」である。今回は女性なので「ミイラ男」ではない。包帯?を顔周辺に巻いてないせいか、イマイチ「ミイラ度」がない。もちろん、アマネットを演じるソフィア・ブテラの演技を感じたいのであれば、それは妥協せざるを得ない部分ではあるのだし、「キングスマン」で女殺し屋ガゼルを強烈な印象と共に残した彼女の個性的な表情、立ち振る舞い(これでファンになった)を生かすのであればそうせざるを得ない・・というか、その方が良いことは分かる。だが、その分、古代のミイラが動き出す恐怖、例えば子供の頃に暗闇に突然ミイラやドラキュラが襲いかかってくるようなイメージを連想することはできかった。

そもそもだ。この映画はそういったモンスター映画ではなくなっている気がする。冒頭に書いたように、トム・クルーズが出ることで「アクション映画」になってしまっているし、それを軸線として映画が組み立てられてしまっているように思う。おまけにやたらとゾンビが出てきて、ミイラ映画じゃなくてゾンビ・ホラーになっていると感じた。そう、「アクション・ゾンビ・ホラー」。うーん、ここが馴染まない。トム・クルーズが身体を張ってアクションをしているのは知っているし、それが彼の魅力であることも分かる。だが、それは「ミッション:インポッシブル・シリーズ」で良いんじゃない?と思っちゃうのだ。たまには、違うトム・クルーズも観てみたいと思うのは個人的な気持ちではあるが。

更に、アマネットは絶対的な力を持つものの、弱点を突かれたとは言えアッサリと拘束されてしまったり。物語の立体感としてこれはアリだと思うのだけれど、もっとこう・・絶対的な邪悪な力の怖さ?みたいなものが欲しかったし、それを期待していた。そういう違和感としては、アマネットがセトを蘇らせるために使うダガー(短剣)に取り付けられた赤い宝石らしきものが、十字軍の墓地で見付かっていること。十字軍遠征は1,100年代のことだし、古代エジプトのものがどうしてここで?とも思った。この辺は僕自身の勉強不足なのか、それともそもそも兵士の棺に入れる意味合いをちゃんと読み取っていないとも感じる。この辺は、後日Blu-rayが出たらもう一度検証してみたい。

もちろん、期待したものと違ったから悪いってわけでもなくて、いつも書いているとおり、IMAX 3Dでのアトラクション的な面白さは確実にある。実際、見終わっても不満はなく、家人と「面白かったよね」と開口一番が出たのも確かだ。今思うと「楽しかったよね」が合っている感じもするが。やはり今の技術は素晴らしいし、映像も音響も、そしてスピード感溢れる展開はエンターテインメントとして充分満足できると思う。これが「映画館で観る」という楽しみだし。

さてこのシリーズ。今後、懐かしくも恐ろしいモンスターたちが、どんなカタチで表現されるのか。現時点で10作品ということを考えると、それなりの長期になるし、そうなると、もし、ラッセル・クロウが語り部、トム・クルーズが主演を続けるのだとしたらそれなりの年齢になる。もちろん僕自身も。そこがちょっと心配ではあるが・・まあ、僕が心配するようなことじゃないだろうね。色々と書いちゃったけど、楽しい映画でありました。

追記

そうそう、先日作った、映画用メガネ。単に老眼を抜いたメガネなんだけれど、これがバッチリ。いやぁ、今までスクリーンの端が見えていなかったことがよく分かった。字幕もハッキリ見えるし、意外なことに左右に大きな歪みがあったことも分かった。やっぱり必需品だったね。