南瓜の馬車 〜いいわけでも許して〜

猫とガジェットと映画と小説の毎日です。

僕が乗っていた、懐かしきバイクたち

僕はどちらかと言うとバイク派で、クルマにはほとんど縁が無かった。なにせ最初に買ったクルマは、バイクでコケて鎖骨を折り、仕事に行くために仕方なく中古の安いクルマを買ったのが初めてのことだ。まあ、それはいずれの機会にでも書こうかな。

今日は、今までに乗ったバイクのことを書いてみようかなと思う。試乗だけなら数十台は乗っているが、自分が所有していたか、ある程度の期間に乗ったものだけを選別した。思いっきり自分語りになるので、その点はご勘弁を。

YAMAHA GR50

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僕が通った高校は、遠距離通学の学生対象でバイク通学が許されていた。もちろん実際に通学できるのはその指定距離以上から通ってくる学生だけだが、公平さの面か、免許を取り自宅で乗る分には禁止されていなかった。

当時は16歳で誕生日も早かったのでお金もなく、オートレースを生業としている叔父が中古車を見付けてきて買ってもらった。それがこの「YAMAHA GR50」である。当時のMR50なんかと同じエンジンをデチューンして、トルクを低速に振ったバイクという印象だった。実際には同じセッティングだったかも知れないが、MRの方が上が伸びる印象を持っている。だが、最初の印象は良くない。それは、その頃、地元ではオフロード系バイクが主流で、オンロード系バイクは「ダサかった」のである。しかし、せっかく叔父が買ってくれたものだし、やっぱりバイクは楽しい。このバイクはステップが固定式で、ちょっとバンクさせるだけで路面に引っ掛かり、リアが跳ねる。何度怖い思いをしたことか。

僕自身はまだ小中学生の頃から、叔父のTL125やXL250を砂丘に持ち込んで乗って遊んでいた。敷地内では足がまったく付かない「CB900F」で走ったこともある。公道を出るのがこれが初めてだし、パワーは無いがとにかく毎日が楽しかった。バイクがあるって良いことだなと思っていたことを覚えている。

HONDA VT250F

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これは、高校を卒業し、初めて自分で買ったバイクである。「HONDA VT250F」実は高校生のウチに限定解除はしていたのだが、初めて買うバイクは新車が欲しかったし、単純に750ccを買うには予算が足りなかった。

このバイクは、1980年にTZ250の血を引くバイクとして発売され人気を博した「YAMAHA RZ250」に対抗して1982年に作られたバイクである。2サイクルのRZに対し、4サイクルがメインだったHONDAがNR(2サイクル一色のWGPに参戦するためにHONDAが開発した、楕円ピストンを持つ4サイクル車)の血統として発売されたものだ。驚くべきことはその高回転型のエンジン。仕組みとしてはある程度当たり前なのだが、当時、2サイクルのパワーバンドは8,000rpmくらいまでだったと思う。だがこいつのV型2気筒DOHCエンジンは12,000rpmくらいまで瞬時にふけ上がる。まあ、もちろん250ccのパワーの範囲でだが。

ただ、個人的には旋回性を上げるために採用された16インチのフロントタイヤ(リアは18インチ)が今一つだった。オーバーステア気味で不意に切れ込む。ある程度の技術があればタイトコーナーを抜けるには良いのだろうが、今一つ接地感が足りないと感じたし、フロントからのスリップダウンを何度か経験した。特に雨の日。まあ、最初に買ったバイクだし、とても懐かしくもある。

KAWASAKI GPz750F

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これ、叔父の経営するバイク屋に放置してあったのをとても安く買い取った。「KAWASAKI GPz750F」である。この頃には叔父の所有しているバイクをとにかく色々と乗っていて、経験的にはかなりの台数を乗っていたと思う。

このバイクを手に入れた時には、まだこの前身である「Z-GPシリーズ」が人気を博していたし、この直後に水冷の「GPZ750R」が発売され、非常に陰の薄いバイクであった。特に750Rは「Ninjya」を冠した初のバイクでは無かったろうか。

このバイクの特徴としては、前後18インチを履いたバイクであったことがひとつ。低重心で重いくせにヒラヒラと走るGPZ-Rと比較すると重心は高いのだが、空冷のせいかエンジン周りがスッキリしていて足が着きやすく、非常に軽快に走る。これはエンジン特性の性格付けの意味合いと車重が軽いことが要因だと思う。低速に振ったエンジンは低回転からモリモリとトルクがある。確か0-100km/hまでの加速だったら、当時、国内随一では無かったか?個人的には適度なシットリ感のあるハンドリングと扱いやすいパワーカーブを持っていて、非常に走りやすいバイクだった。ある程度のペースでも思ったラインにピタリと寄せられる。人気が無かったのが非常に惜しいなと思ったバイクである。ただ、僕は160cmほどしかないので足が着かなかったのが割と厳しかったかなぁ・・。まあ、これはどのバイクにも言えることだけれど。

それとこのバイク、何故か燃費がとても良くて、30km/L近く走った。2サイクルの下手な原付よりも燃費が良かった記憶がある。

HONDA RS125

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見れば分かる通り(写真は僕自身である)、純粋なレーシングマシンである。「HONDA RS125」84年型だ。当時はまだTZ125が強かった時代であったが、確か、HONDAはHRCが走らせていたファクトリーマシンをベースとした市販レーサーを1982年に出したのでは無かっただろうか。1983年型でそれなりに熟成が進み、1984年モデルはTZよりも扱いやすく、そして早かった。面白いのが、レーサーのくせに「アイドリング」が出来たりした。1987年にアルミフレームのまったくのモデルチェンジまでは、マイナーチェンジをしつつ、ノービスレーサーが走るには充分な性能を持っていたと思う。クラッチも湿式だったしね。

レースを始めた時に思ったのが、「公道を走るバイクと、純粋なレーシングマシンは違う乗り物だ」ということだ。もちろんそれは、走るペースの問題が大きいのだが、ブレーキにしてもパワー特性にしても車体にしても市販車とは違い過ぎる。そもそもレースは、走るために意識してやることがとても多い。コースを覚えて、ライン、ブレーキング位置の確認などもそうだし、ブレーキングも前後の順番、握り始めからリリースの適切な方法、走り出してのステア操作、体重移動による荷重コントロール、アクセリングと細かな操作が要求される。もちろんメカニックなどいなかったので、メンテナンスは自分でやる。走ってはマシンをバラしたり、セッティングや部品交換のために頻繁に弄っていた。このマシンでバイクの様々なことを覚えたと思う。

正直、僕としてはバイクで自分の思った通りに走れた時の爽快感は他に比較できるモノがないと言い切れる。このマシンは素直な操縦性とバランス、そして穏やかな出力特性を持ったマシンだった。ただ、スチールフレームは強度が足りないのか、FISCOの最終コーナーではどんなに足回りのセッティングを詰めてもヨーイングが発生する。それでもマシンを抑え込んでアクセルを開け続けることのスリリングさ。もうあんな体験はできないだろうなと思う。ちなみに、125ccと言っても当時でも最高速度は200km/hに達する。軽量な車体にハイパワーなエンジンを組み合わせた結果だ。

できることなら一度で良い。もう一度レーサーでサーキットを走ってみたい・・いつも思うことだ。

YAMAHA ポッケ

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これ、レースをやっている時に「足」として買ったバイクだ。ほとんど通勤に使っていたのだけれど、小さいクセに良く走る。同時に「フォーゲル」というバイクも出たが、これはHONDAの「モンキー」と「ゴリラ」に対抗したものだろう。2サイクルのエンジンはそれなりにパワフルだし、ショートホイールベースのこいつは実に街乗りに良い。スクーターがこの頃には流行しだしていたのだが、どうもマシンをホールドできないのが不安で、こいつを買った。ただ、小径ホイールのせいで悪路に弱く、ちょっとした悪路で遊んでいて良くコケた。結局壊して2台買った記憶がある。

この手のバイク、今でももう少し排気量が多いもので出ているが、ちょっと欲しいなと思ったりする。例えばHONDAの「グロム」とか。しかし今のウチの家計ではちょっと無理なのであった。残念。

SUZUKI GSX-R400 TT3

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これ、写真は僕だが、マシンは僕のじゃない。耐久レースだったのでペアを探していた後輩から声がかかったので乗っていたマシンだ。市販車ベースのレーシングマシンに乗ったことが無かったので興味があったのだが、とにかく重い。もちろん、市販車そのままよりもかなり軽量化されているしパワーも上げてある。ただ、後輩があまり鈴鹿サーキットに慣れていないせいか、色々な部分でセッティング不足だった。僕自身、仕事の合間に練習で乗ったが、なぜか天候に恵まれず雨の日が多かった。晴れたのって最初に乗った時だけだったんじゃないかな。

で、実際にこれで予選を走った際に、ペースを上げようとした段階で「こりゃダメだ」ってことになった。エンジンパワーはそれなりにあったし、フレームが元々良かったのか強度不足も感じなかった。ただ、足回りが詰め切れてなくて130Rが死ぬほど怖かったのを今でも生々しく覚えている。もう一つ、クランケースのサイドカバーとかも変えてなくて、邪魔でバンクするとガリガリ。ハッキリいって、これはもうセッティング云々の前の話だなと当時は思ったものだ。なんとか予選は通りたかったのだが、この年は参加台数がとにかく多くて(600台を超えてたんじゃないかな?)、結局、自分の125ccでのタイムに及ばなかった・・というか、最後のタイムアタックで、すごくペースの遅い前走者にスプーンカーブで引っ掛かってしまい、コースアウト。転倒こそしなかったが、最後の周に集中して思い切り頑張ったし、もう少し良いタイムが出せたハズだと思ったからとても残念だった。先輩の意地もあったから後輩よりは良いタイムは出したが、全体の半分くらいの順位でしか無かった。残念な思い出でもある。

KAWASAKI KS-2

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こいつは東京に来て初めて買ったバイクだったと思う。ポッケの印象が良かったせいもあるが、排気量が少し大きくて実にキビキビとした走りのマシンだった。思い切り振り回せる安心感と面白さ。公道じゃ無理はできなかったけれど、それでも充分面白いバイクだった。ただ、高速が乗れないのでということで、割とアッサリと手放した。

僕みたいに背が小さくてもアクセルターンもウイリーも自由自在。良いバイクだったんだけどね。

HONDA LEED90

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これ、お買い物用に買ったやつ。サスペンションがフワフワで乗り心地も良かったし、90ccということもあって思ったよりもパワフルだった。だが、バンクするとそこいら中設置するのが・・って種類のバイクじゃないか。スクーターは構えて乗らなくて良いのが便利だね。自転車感覚で走り出せるのが良さでもあるんじゃないかな。

KAWASAKI GPZ600R

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当時国内で販売していなかったGPZの600ccバージョン。こいつも良いマシンだった。とにかく高速安定性が抜群。この後に紹介するGSX-R750よりも高速道路の安定性は上だった。低重心で重さも感じず、コーナリングでも安定している割に軽快さがあった。乗っていて楽しいか?と言われるとそれは今一つ。どちらかと言うとツアラーな感じでスポーツって感じでは無かったように思う。

SUZUKI GSX-R750

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これが自身にとって最後のバイクになった。そして、もっとも面白いバイク。これは89年モデルで、1100ccとは違い750専用フレームの機種だった。確か生産期間が短かったと思う。翌年には新フレームのが出たからね。

とにかくパワーがあって楽しかった。ちゃんと扱わないと乗り手を振り落とすようなじゃじゃ馬。この機種にはステアリングダンパーが無くて、走り方が悪いとキックバックで手首を痛めることもある。この頃にはクリップオンハンドルも認可されていて、タンクを抱え込むようなライディングフォームになるのも実にスポーティ。パワーは下から圧倒的に出ていて、それでいて高回転まで良く伸びる。1100ccに比べると軽い車体もあって、750ccでありながら軽快性も両立しているハンドリングの良いマシンだった。YA他社の同クラスのバイクに比べると車体剛性が高くて、それは良い意味でも悪い意味でも操縦性に遊びが無いというか、割とシビアなコントロールを要求される車体でもあったと思う。寝かし込んだ状態でパワーをかければあっけなくパワースライドに持ち込める。車体も小振りで、パワーを扱うことができれば振り回せる楽しみのあるバイクだった。

もちろん、今のレーサーレプリカには性能面では全然敵わないだろうと思う。でも、当時としてはこれは非常に楽しいマシンだった。これ、結局2年ほど乗って、お金に困った時に売ってしまったことを後悔したマシンでもある。ただ、そのライディングスタイルからも長距離をクルージングできるタイプではない。日常的にちょっと近場に楽しみに行く。そんなバイクだった。嫌なことがあったりした時には一晩中走り回ったりしたものだ。

 

なんとなく、昔乗ったバイクが懐かしくて色々と紹介してみた。今はもう公道でバイクを乗るのは息子も家人も反対が凄まじいし、ちょっと無理かなと思う。杖をついてはいても、短時間なら乗れるのにね。