3月も下旬に入ると、そろそろ桜の開花予想が出始める。桜と言う樹は日本において象徴的であり、好まれる品種でもあり、更に、一斉に開花する姿は荘厳としか表しようが無い。僕が足が悪くても毎年花見に行くのは、面倒だと思いつつも、やっぱり桜は日本にとって「特別な花」だと思うからだ。
電子書籍利用が頭打ち?
先日、こんなニュースがあった。
僕がこの記事のタイトルから読み込めるのは、「電子書籍は頭打ちでこれから減ります」だ。しかし、グラフを拡大して良く見てみよう。僕がこのグラフから読み取れるのはこんな感じだ。
- 利用している人は微増でほぼ変わらない
- 利用する予定である人は波があるがあまり変わらない
- 利用について検討しようと思う人は微増
- あまり関心がない人は変わらない
- 利用するつもりはない人は微減
おかしいと思わないだろうか?これから「『利用する意向なし』」が増加」と読めるだろうか?僕には逆に見える。利用について前向きな人の割合はトータルすると「37.7%」、あまり関心はないは別として、利用するつもりはない人は「36.4%」。しかもそれは年々微減だ。まずはここだけ見てもタイトルがおかしいと思う。
ちょっと色々と調べてみる
次ぎに、この調査の仕組みを見てみる。調査ツールはこれ。
つまりこの場合はImpress社がリサーチャーに依頼したとニュースでは読める。アンケートを依頼する方法とその回答方法を読むと、対象は「インターネットを利用している人」で良いだろう。そこに電子書籍に対する興味の濃淡は意図できない。それも問題だと思う。
次ぎに調査対象年齢が15〜69歳であること。そもそもこのアンケートに答えられることが可能かどうかを考慮すれば妥当な感じはする。しかし、電子書籍の種類別の利用率を考えると、もう少し下の年齢も必要じゃないだろうか。それはコミックでの利用についてである。データは古いが、以下の総務省の報告を見てみる。
電子書籍の利用状況についての調査研究報告書(平成22年3月)
http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/linkdata/h22_07_houkoku.pdf
これを読んでちょっと抜き出してみる。
- 電子書籍は10〜30代にピークがある
- 読んでいるメディアは圧倒的にコミック(漫画等)が多い
- コミックを1年間購読していない人は他の種別に対して突出して少ない
- コミックの平均購入額が突出している
これを見ても、アンケートの対象年齢をもう少し下げてみる必要があるように思うし、そもそも対象を「読書をする人」を前提にすべきではないだろうか?ただ、インターネットを使った調査なので、そこに子供がリーチできるかどうか?という疑問は残る。
他のデータも見てみよう。
これを見れば、いかにコミックが浸透し、その数を伸ばしているかが分かり易いと思う。これは15〜44歳にピークがあると行っているが、これに対象から外れている小中学生を加えればもっと多いだろう。考えてみて欲しい。自分が漫画をよく読んでいたのは何歳くらいか?僕自身は小中校生の頃がピークだったと思う。確かに働きはじめてある程度自分のお金が自由に使えるようになってから増えた時期もあるが、友だちとの貸し借りも含めてコミックを一番読んでいたのはやっぱり小中学生の頃だ。関係無いが、それでも僕の読書量は小説の方が上回っていたけれど。
次ぎは国民の読書量についてである。資料は文化庁「国語に関する世論調査」の結果である。残念なことに、ここは雑誌や漫画を除いている。
ここから読めるのは以下のことだ。
- そもそも雑誌や漫画を除いた状態でも、読書量自体がそもそも少ないし減っている
- 漫画(コミック)や雑紙を除いた状態については10〜30代はピークとは一概に言えない
- 逆に子供世代の読書離れは顕著(15歳以下はどうだろうか?)
またその理由についてちょっと他の統計も貼っておく。読書量が減っている理由について書いてある。出典は「財団法人 出版文化産業振興団」。データはちょっと古くて2010年。
現代人の読書実体調査
ここで注目したい点は、読書をしない理由だ。その場合、最初から読書に興味が無い人は考慮しなくても良いだろう。
- 成人調査の場合は「読みたい本がない、何を読んで良いのか分からない」「時間がない」が有意
- 中高生調査の場合は「本を読まなくても不便はない」
これは、成人の場合はそもそも、「本を読まなくても不便はない」に似ているが、読書欲求があるかどうかだろう。つまり、その部分を分けることが必要であると思う。また、読書する本の選択において適切な機会を得る手法なり時間にも大きな問題があると言える。ここは新たな商機として、別途熟慮しても良い部分だと思う。
ただ、中高生の場合にはコミックが圧倒的であることを考えれば、上記の調査は「読書全体の総量」と考えればあまり意味を成さないと思える。
個人的にはこれに加えて電子書籍サービスにおいては、専用機の存在が急速に薄れてきていると感じる。これは電車内での体感や、周囲に専用端末を持つ人が少なく、僕自身も専用機からアプリへの乗り換えだからだ。数値で見た方が良いと思ったが、有意なデータを持つページを探しきれなかったので、そこは想像の域を出ないのでご勘弁を。
で、それを踏まえた上でスマホやタブレットの増加傾向と電子書籍について追記してみる。
スマホの利用者は年々増えていることは様々なニュースや情報を見ていれば分かる。タブレットについては成長速度が鈍化しているが、この要因については今回は細かくは調べないで省略しよう。まあ、買い替えのタイミング時期がスペックや利用用途により、スマホとタブレットでは違うことや、スマホの大画面化など、様々な要因があるとは思うが。一応参考までに以下の記事を貼っておこう。
また、電子化率そのものの問題もある。
そもそも電子化されている書籍をターゲットととしないと正しくは判断できない部分もあるだろう。書籍の種類や権利者、または電子化に向いているかどうか等によっては電子化をしていない書籍はまだまだ多い。
ここではビジネス書とコミックについては「ほぼ100%」とあるが、それらを読まない人から見たら電子化に意味を見いだせないだろう。もちろん、「紙の本の方が読みやすい」と言う人はたくさんいるが、そもそも電子書籍の利用率が落ちているというのであれば、その利用率を等価に評価するために対象を「電子化済みの書籍において」としないとアンフェアだと感じる。
個人的な意見として総括的してみる
と、あまり時間をかけずにここまで調べ、色々と考えてみても最初の記事のタイトルはどうか?と思う。恣意的とは言わないが、グラフとの乖離もあるし、他のデータとの比較を見てもアンフェアな気がする。
あくまで個人的な感想だけれど、どうも「電子書籍」に反発を感じている人のある種の抵抗を感じずにはいられない。もちろんそれはそれで当たり前な話ではあると思うんだけどね。電子書籍の利点を明確に理解でき、自分にとって有用であるとするのなら乗り換えれば良いのだから。無理に電子化する必要もないだろう。
まあ、こういうことは世の中にいくらでもあるけどね。見る目を養うことと、人の流れを読むことは本当に難しいなと思う。これは最近の他の報道についても言えることであるが。
ちなみに、僕は便利に使わさせていただいてます。どうしても電子化されない、大好きな宮部みゆきさん、真保裕一さんの作品意外はね。おかげさまで本棚はとてもスッキリしています。