南瓜の馬車 〜いいわけでも許して〜

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好みが分かれるとは思うが、クリアで爽快な音(Fiio X5 2nd)

さて、唐突にX5 2ndを購入してからおおよそ100時間の再生時間が経過したので感想を書いてみようと思う。ネットで見ていると思ったよりもレビューも少ないし評価もそれほど高くないのがちょっと不安でもある。オレの耳、悪いのかな?ってね。まあ、50代なんだから良いはずはないのだが。

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クリアケースは最初から付属していたもの。

 

買って聴いてすぐに思うのは多くの人と同じことだと思う。

 

カタイ・・

 

思わずカタカナで書きたくなるくらい硬い音だなと思った。試聴機はそんなことは無かったので、ある程度鳴らさないとダメかな?と思ったというか、今までのアンプでもある程度の慣らし運転みたいなものは必要だった。で、現在100時間を超えたので頃合いかなと思った次第である。

 

さて、現在の感想に移ろう。
カタイ音はやっぱりカタイのだが、痛いほど硬いのではない。精細感、音の定位、個々の楽器の鳴りの良さはX1と比べるまでもない。以前の試聴時には気が付かなかったのだが、それは周囲の騒音の中であったり、X1に比較すると低域が若干厚めなために短い時間では気が付かなかったのかも知れない。以前はX1のライアウトと比較しても若干上かな?くらいに感じていたのだから。

 

ところが実際に長時間使ってみると価格以上の差を感じる。精細感もそうだが、高域も低域もずっと伸びる。X1でも不足は無いと思っていたが、こうやって実機を十分な時間使っていると、高域は繊細で上まで伸び、低域もずっと重い音まで出る。曲によっては曲そのもののニュアンスが違うと感じるくらいだ。明瞭で快活。精細感に溢れた素晴らしい音だ。楽器の分離も非常に良い。

 

基本的な音の傾向はフラットで、若干低音が多いと感じるがこれはどのイヤホンを使うかにもよるだろう。実際に普段使いのCW-L15で聞くとほぼフラット、家のいくつかのイヤホン/ヘッドホンで試してみたが、大方問題が無いものの、お気に入りのMOMENTUMで聴くと硬めのドンシャリ、それでいてボーカルが遠すぎてちょっと残念な感じ。MOMENTUMだと相性が悪いとハッキリ感じる。もっと色々と試してみれば、この音だと合わないイヤホン/ヘッドホンはそれなりにあると思える。

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逆にL15だとフラット同士なのだが、僕のそもそもの好みに合うし、曲によってはイコライザを少し弄るだけで傾向が変わる面白さがある。イコライザは基本的にフラットな状態から苦手なところを下げるところから始めるのが基本だと思っているが、125Hzの部分を-1.5dBほど下げただけで滑らかさはそのままに、スッキリと見通しの良い、ヌケの良い音になった。これだけで十分。EDMを聴くなら4KHzから上をやっぱり少しだけ上げてあげれば弱ドンシャリでエッジの効いた音を楽しめる。もちろん、高域を上げなくても十分な量感があり、硬めの音と相まって厚みはあるが暑苦しくない爽快な音になる。ただ、低域を上げると硬さが強調されるように感じる一面もある。ひょっとしたらこれはもう少し鳴らすと変わるのかも知れないが。

 

あまり硬い硬いと言うとクラシックやボーカルには合わないように感じるかも知れないが、さにあらず。ボーカルの艶も素晴らしい。Kの「大切な人」では、ライブのホール感、ピアノの繊細さ、Kのボーカルの艶っぽさが見事に出ている。特にX1でも同様に感じたがノイズフロア(フロアノイズかと思って調べたら、ノイズフロアが正しいらしい)を感じ無い。ライブを聴いていると一瞬の静寂が時が止まったように感じる。

 

X1やX3 2ndと最も違うと思うのは「音の立体感」だ。音場は決して広いほうではない。狭くはないが平均的だろう。ただ、音の粒立ちが細かいことと楽器の定位が良いのだろう。目の前に立体的な音場がキレイにできあがる。この立体感と硬さを含んだクリアさはちょっとクセになる。気持ち良い!と感じるからだ。この音に慣れてしまうと、他のDAPをちょっとだけ試聴すると、どれも緩く感じてしまう。緩さは精細感が足りないように感じてしまい、どうしても物足りなさを感じる。実際、ヘッドホン祭りやそれ以外でもたくさんの機種を試聴したが、どれも「緩い」と感じてしまう。慣れとは恐ろしいなと思う場面でもある。

 

詳しいことは分からないが、このクリアさは「PCM1792」というDACの性格なのだろう。非常にエッジが効いているのだけれど、万人に受けるかと言うとちょっとなんとも言えない。もっとウォームな音を好む人も多いのは、最近のDAPの傾向を見ても分かる。価格帯を考えてもこういう選択ができるというのは、きっとこの硬さが好きな人が社内にいるんじゃないかな?とさえ思える。

DACやアンプの構成はホームページ上に掲載されているので細かく書かないが、アンプもなかなか強力である。そもそも3300mAHのバッテリーを内蔵し10時間以上とされたカタログスペックからもアンプが大飯食らいであることが想像できる。しかし、ポータブルにおいてフォンアウトの出力の低さはバッテリーもちに貢献しても、音には貢献できないと思う。本体が思いの外発熱するのもその証左であろう。もちろん持てないほど熱くはならないし、不安が無い程度の熱さだ。iPhoneを充電している時くらいの発熱と言えば分かりやすいだろうか。

 

アンプが優秀だと思うのは、3万円程度のアンプを挟んでも音質向上に寄与できないと感じるからだ。それ以上のものを試してみたが、音の色付けが若干変わるが精細感が明確にアップするとかの変化は感じなかった。そういう意味ではX5 2ndはこれ一台で運用できるメリットもある。大きさ的にも重さ的にも胸ポケットにもピッタリ収まる。電源管理の煩雑さもない。価格も安いしどうしてこれが人気ないのかな?と思うくらい。まあ、音色の特徴が強いので好き嫌いの問題だとは思っているが。少なくとも僕は大好きだ。

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操作性の話もしよう。基本的な操作性はX1もX5 2ndも同じ。ただ、ライアウトとフォンアウトが共通なX1とメニュー構造が微妙に違うとか、イコライザとボリュームの刻み幅が違う程度だろう。メニュー階層は浅くて分かりやすく、割とよく整理されている。操作で迷うことはないだろう。そもそも設定できるところが少ない。個人的に助かったのは、X1をMacのiTunesのプレイリスト同期で散々悩んだことだろう。これが役に立ち、X5への移行もスムーズだった。ただ、日本語のコードを自作のスクリプトで変換しているのは変わらないので、この辺、同期アプリの「Dapper」が対応してくれると助かるのだが。

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X5だけが違うのはmicroSDが2枚使えることだろう。多くのライブラリを持ち歩きたいケースや、最近のように容量が大きいDSDファイルを扱う場合には強い味方になる。そういう意味でもX1はライトに、X5はヘビーに、X3はその中間という位置付けなのだろう。

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問題はレスポンスだ。トロい。(下記にも追記しましたが、2015/10/30アップデートがあり、改善されました)もうどうしようもなくトロい。それはX1でもそうだったのでX3 2ndも同じだろう。せっかくのホイールも意図した位置でピタリと止まらない。これはかなりのストレスだ。それに加えて、ホイールに加速度を加える機能がなく、フォルダの構成を工夫しなければならないだろう。僕は「Dapper」を使ってiTunesのプレイリストをそのまま持って来ているので、この辺がとても不便だと感じる。なにしろプレイリストが100近く、フォルダーもアーティスト毎なのでかなりの数になる。多くの人はこれで使うのを諦めてしまうかも知れない。このトロさはボリュームも同じだ。長押しすると指を離してもしばらく動き続ける。音は良いのにこういう部分が勿体ないと感じる。

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液晶はX1に比べると発色も良く高精細だ。非常に見やすい。ただ、ID3タグに完全に対応していないことなどの不便もある。パネルはタッチパネルではない。ここも好き嫌いが分かれるところだろう。ちなみに僕は物理ボタンの方が好きだ。ポーチに入れておいてもその上から曲の停止、再生開始、早送り(曲送り)、巻き戻し(曲戻し)などができる。これは初期設定では画面が消えているとサイドボタンしか操作できない。なので、設定の中の「キーロック設定」を変更する必要がある。

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僕は基本的に出掛ける前にプレイリストを決めたら後は曲の停止、再生開始、曲送りしか使わない。ボリュームについては曲の形式にもよるが、AACとMP3についてはゲインを揃えているので使うことがない。ハイレゾのアルバムを聴く場合は事前に変更している。

 

ただ、タッチパネルの有用性を否定する気は毛頭ない。iPhoneのプレーヤーは非常によくできているからだ。しかし、曲送りなどをする場合には一度画面を出さないといけないことには大きなストレスを感じている。その他はとても良いのだが。

 

とりあえず、思ったことをツラツラと書いてみた。他にもボタンの長押しにマニュアルに記載の無い機能が割り付けてあったりとか細かい部分もあるが、長くなったのでこの辺で。総じて、高音質で非常にコストパフォーマンスが良いが、好みが分かれるだろうな・・というのが全体的な感想である。

 

追記:2015/10/30

トロいって書いたらファームウェアのアップデートが来たようです。(^_^;)

とりあえずベータ版ですが、スクロールの精度が格段に良くなっています。

www.head-fi.org

 

追記:2016/04/08

MacでiTunesで同期したい方、こちらもどうぞ。

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