南瓜の馬車 〜いいわけでも許して〜

猫とガジェットと映画と小説の毎日です。

Kindle Paperwhite

電子書籍元年は絶対に来る!と思い、数年前から様々な方法を試してみたが、ここで一つの中継点に到達した気がする。それが「Kindle Paperwhite」だ。

まず最初に言いたいのが、Paperwhiteは他のタブレットとは違うということ。これは他のEInkの端末にも言えることだけれど、様々な機能の制約と特化からタブレットとして使うには無理があることが言える。それを勘違いして買ってしまうと残念な一品だと感じてしまうと思う。
逆に考えると、電子書籍を目的、それも小説などを読むことを考えるとこれ以上の端末は現状無いと思える。そういう意味で素晴らしいガジェットでは無いだろうか。

他のサイトで開封の儀やらインプレッションがあるので面倒なことは止め、単純に自分が感じた使い勝手等を書いて行こうと思う。

PaperwhiteやKindle端末が優れていると思うのは、スムーズに読書を進めるための様々な工夫があることだと感じる。それはEInkを採用したことや端末の重量などもあるが、最も効果的なのはAmazonのプラットフォームを通じた購入から読書までの流れの簡略化だと思う。
昨今ではITリテラシーがそれほど高く無い層でもAmazonや楽天を利用したことのある人は意外に多いのではないかと思う。最初こそ購入に戸惑うだろうが、慣れてしまえばこれほど便利な買い物は無い。商品を探し、他人のレビューから評判を伺い、しかも安いし家まで持ってきてくれる。リアル店舗を持つ家電量販店が青色吐息なのも理解できるだろう。Paperwhiteで本を購入するとする。本体でストアに接続し(僕のは3G版)、読みたい本を検索。適当なものを見付けたらレビューを読んだりしながら購入。これもワン・タップ。小説ならダウンロードに1分もかからないだろう。トータルでも本の選択にそれほど迷わなければ5分もすれば本を読み始めることができる。それも、3Gの電波が届いていればどこからでも可能なのだ。これは素晴らしい。

Paperwhiteで採用しているEInkは今更珍しくないが、改めて本を読むと目に優しいことが分かる。しかもフロントライトを実装しているので、飛行機の暗い機内でも本を読み進めることができる。反転は4〜5ページに一回だろうか。しかしレスポンスが良いこともあってあまり気にならないし、これで読書が瞬断されることも無い。ただ、最初に電源を入れた(正確には届いた時点で電源はONになっている)時に青いムラがあることが気になった。フロントライトの構造上の問題だろうか。使っているウチに気にならなくなったが、最初から輝度を少し下げておくとさほど気にならなくて良い。ちなみに、僕の現在の設定は15にしてある。

解像度がそこそこ高いため、文字もルビも潰れることなく読める。雑誌のように写真入りで組版されたものはどうかとも思うが、少なくとも小説主体で読む僕には一切の問題がない。フォントの切り替えや輝度調整のメニューにもアクセスし易く、UIが現状の自分の意識との齟齬が少ない。普段、PCやらスマホを使っている人は、マニュアルが無くても操作に迷うことは無いだろう。
ただ、「スクロール」という概念が無い。これはEInkが採用された以上、仕方がないことだけれど、最初は戸惑う。おまけのブラウザはともかく、ストアにアクセスした時にも一ページ丸ごと書き換えることに違和感を覚えた。まあ、ここは「仕様」だけれど。

操作的にはもう一つ要望がある。タップでのページめくりの位置をカスタマイズできるようにして欲しい。僕は手が小さいので、タップでページをめくるのだけれども、右手で持ってディスプレイの右端をタップすると前のページに戻ってしまう。前ページへ戻るためのタップエリアは右端の細い部分だけれど、それでもそこをタップしてしまうことがある。これをカスタマイズできれば完璧だなと思う。

問題は少し重いところだろうか。まあこれは、Sony Rederの重さを知っているからだろうし、フロントライト分の増量を考えればきっと健闘しているのだろう。ただ、これに純正のケースを付けると結構重い。純正のケースが重いのだ。でも、これを使っていれば、蓋を開ければすぐに読み始めることができ、終われば蓋を閉じるだけで良い。この便利さを知ってしまうと他に同じような機能があるケースが出るまでは買い替えに躊躇する。早くサードパーティー製の軽くて高機能なケースなりフリップなりが出て欲しい。

16階調のEInkディスプレイは、それなりにカラー作品も読めるかとは思うが、読み易くはない。やはりコントラストが明瞭な白黒作品で使うのが良いだろう。試しにおまけのWebブラウザを使ってみるとカラーページにある小さなページの文字は潰れてしまっている。緊急避難的には十分使えるが、普段遣いしようと言う気にはならない。これはあくまでも一時凌ぎだろう。実用的では無いと思える。

電子書籍としてのメリットとして、物理的な重量の軽減はもちろんそうだが、それ以外に他の機能との連携がある。一つ目は「しおり(ブックマーク)」の共有だろう。Paperwhiteで読んでしおりを付けた箇所は、iPhoneのKindleアプリからでもiPadのkindleアプリからも利用できるし、読みかけの部分を自動的にクラウドにアップロードし、他の端末でも読みかけの途中から復帰できる。二つ目はメモ機能。選択した部分をメモしておける。もちろんこれも共有できることから、文章中の気になる部分を他者と共有することができる。三つ目は辞書との連携。分からない単語をハイライトさせ、辞書で当該の語句の意味を調べられる。これらの機能が絶妙に便利だ。最初は不要な機能かと思っていたが、使い出すと手放せなくなると思う。紙の本には無い機能で、電子書籍ならではと言える。

細かいところでは、読書の残り時間や残りページ数の表示。これはたまたま残り時間の部分をタップして気が付いた。普段の読書は残りのページ数を気にしながら読書をしていたので、最初はこれが気になり、残りページの方が分かりやすいのに・・と思ったりしたが、これまでの経験から後どのくらいで終わりなのかという意識がページに置き換えられているせいだろう。これもしばらく使っていると時間の方が直感的に分かりやすいし、読了するまでの時間を計算できるのは微妙に助かる。今は残りの時間で設定している。

あぁ、大切なことを忘れていた。EInkを採用したメリットとしてバッテリーのもちを外すわけにはいかない。日常的に読書をしていても2週間は充電の必要がない。Wi-Fi環境にいるともう少し減りが早い気もするが、昨今のスマホやらタブレットに慣れているとまったく気にならない。たまにハタと気が付いて充電すれば十分。この点だけでもPaperwhiteを選択する意義がある。

総じて満足感の高い製品である。もちろん、僕のように小説主体での読書が好きな人には・・と言うところだが。