南瓜の馬車 〜いいわけでも許して〜

猫とガジェットと映画と小説の毎日です。

BOSE IE2

実はちょっと前にBOSE IE2を購入してみたので感想を書いてみる。

元々僕は広い音場が好きなのでイヤホンにはほとんど食指が動かない。昨年の夏はその暑さにもメゲずにヘッドホンをしていたくらい。狭い音場で我慢して音楽を聴くくらいなら、汗をタラタラ流しながらでも聴きたい音で楽しみたいというのが本音だった。イヤホンはその構造上、どうしても脳内の狭い場所で音が定位し、広がりをあまり感じない。一時期はUE 10proやZennheiser IE8などイヤホンでも比較的音場が広いとされているものを購入し、試してみたがやっぱり満足できない。先日、音場の広いDENON AH-D1100に出会ってからはもっぱらそれを外出のお供としていた。

しかし、あまり同じものを聞き続けるとどうしても飽きてくる。あまり購入する気は無いものの、家電量販店に行っては様々なイヤホン/ヘッドホンを試聴していた。IE2の存在は前から知っていて、その前のモデルの時から興味自体はあった。ただ、その遮音性の無さを致命的と考え、IE2も試聴すらしなかったのがついこの間までの私。

ところが先日ちょっと興味があってIE2を試してみた。すると、イヤホンなのにとにかく抜けが良く音場が広い。構造的にもオープン型だからそれは当然としても、他のイヤホンとは一線を画すその仕様にちょっと興味を持った。家電量販店での試聴だと店内はノイズの嵐なわけで、じっくりと試すことができない。それでも、前モデルに比べると控え目になった低音、解像度が上がった中高音が感じられた。値段も1万円をちょっと越えるくらい。これなら手持ちの機器ともバッティングすることは無いだろうし、使い分けの一種類として買っても良いかな・・というのが購入の理由だ。

さて、今日で購入から二週間が経つ。1日の使用時間はだいたい2時間程度。トータルでもまだ30時間も鳴らしておらず、感想にはまだ早いかなと思ったが、使ってみると中々の好印象で、この記事を書く気になった。

まず、音質から。前作に比べるとハッキリと解像度が上がった中高音だが、もちろんその他のハイエンド機に比べると明瞭さに欠ける気がする。しかし、ベールを被るというよりは、むしろ柔らかい落ち着いた音で、これは好印象。音の分離も定位もそれほど優れているというわけでは無いが、クラシックをジックリ聴くので無ければ十分だと思う。むしろその構造による抜けの良さは特筆ものだ。イヤホンの狭い音場など微塵も感じない。下手なヘッドホンよりも遙かに広い感じがする。曲によってはあまりの抜けの良さに爽快感すら感じる。鳴らしはじめこそ少し籠もった感じを受けたが、20時間程度で既にその籠もりも感じなくなった。ただ、妙に楽器の数が少ないような印象を受ける。これはQC3でも感じていたことで、BOSEの音造りなのかも知れない。その分騒がしさは感じず、落ち着いて聴くことができる。
BOSEと言えば低音だけれども、AE2でも感じたことだが、量がかなり減っていてある意味「BOSEらしくない」と感じてしまう。しかし、凄く低くは無いが低音自体は良く締まっていて、中々気持ちが良い。おそらくこれでも他の製品よりはかなり量が多いのだろうけれど、低音が好きな私にはむしろ少ないくらい。トータルとして思った以上にバランスが良く感じる。個々の音は主張せず、マイルドな味付けが気に入った。

しかし、遮音性の無さは相変わらずで、通勤電車では辛いかなと思ったが、これは意外なことに杞憂だった。「カクテルパーティ効果」というのをご存じだろうか?選択的視聴のことだけれども、電車で音楽に聴き入っていると、電車のノイズやアナウンスは思ったほど気にならない。というか、個人的にまったく問題を感じない。遮音性が低く、音は入ってくるのだけれども気にならないのだ。だけれども、環境が変わるとその間だけは不満が出る。たとえば電車から降りるとその瞬間降り注ぐホームの雑踏に音楽はかき消される。これはハッキリと不満だけれども、むしろ人によっては外界の音が聞こえることで安全だとも思うのかも知れないと感じた。しかしこれは、抜けの良い音と引き替えだと思えば悪くない。どっちを優先するかだろう。

ただ、音漏れには注意が必要だ。本体の裏側に大きな穴が開いていて、そこからかなり漏れる。ボリュームを大きくしてエレベータに乗ると、曲目まで分かるかも知れない。これは注意しなければならないだろう。

フィット感については以前から好評化だったが、これは継続されている。付けていても違和感はなく、窮屈さはまったく感じない。IE2の一番の美点はここだろう。長時間着けていてもまったく気にならない。張り出したウィング状の突起のせいか、前作のようにズレることも無く安定している。この快適さはちょっと捨てがたいものがある。

コードは1.15m。これは身長の低い私であればそんなに問題は無いが、背の高い人にはきっと短いと思う。事実、冬場にコートを着た場合にはズボンのポケットにDAPを入れると短い。まあ、コートのポケットに入れれば良いのけれど、私はズボンに入れる派なのでここは妥協が必要だ。できればもう5cm延ばして欲しかったと思う。他のヘッドホンモデルと長さが違うのは少々理解できない。コードの質は特徴のある白黒のシマシマで、これだけでBOSEだと気が付く人もいるだろう。コードは柔らかく、絡みにくい材質のようで、ここはとても好感が持てる。音質を考えればもっと頑丈なものの方が良いのだろうが、この軽快性も捨てがたい。ある意味バランス的にちょうど良いのではないだろうか。

総じて、遮音性と音質が理解できれば、この製品は十分アリだと思う。むしろ、イヤホン/ヘッドホンとして考えると唯一無二の存在では無いかと思う。他に似たような製品を知らないからだ。なので、使い分けとして考えてもこの製品を選択する意味は十分あると思う。むしろ、この装着感でぬけの良い音を味わってしまうと、病みつきになるのではないかと思う。事実、今では私は通勤電車でもこいつを愛用している。それが全てだろう。

結果的に今回も中々良い買い物だったと思った。

追記(2011.4.11)
現在はaudio-technica AT-PHA31i(アンプ)を使っている。中音の張り、高音の伸びが付加されて、とても気持ちよくなる。僕はポータブルにはアンプはいらない派だけれども、このアンプは使い勝手が良く、邪魔にならない。まあ、詳しくは後日感想を書いてみる。