南瓜の馬車 〜いいわけでも許して〜

猫とガジェットと映画と小説の毎日です。

DUCATI MONSTER +を1,000km乗って

モンスターが納車されて、はや6ヶ月。先日6ヶ月点検に出してきた。

まあ、やることは大体どのメーカーも同じだけれど、オイルとオイルフィルターの交換が若干お高い。まあ、これは最初から分かっていたことなので仕方がない。

で、とりあえず約1,000km乗ってみての感想を素直に書いてみようかと思う。

車体

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とにかく25年ほど経過するリターンライダーなのである。もう細かいことは忘れちゃってるかなぁ・・なんて思っていたら、意外に身体は覚えているもので、身体は自然に反応する。ただ、いかんせん衰えは隠しきれず、188kgと軽量なハズの車体ですら結構な重さを感じて、最初の頃は大丈夫かな?なんて思ったりもしたし、走る前は少しナーバスになっていたと思う。足回りについては後述するが、最初は停止時に微妙にフラつくこともあった。こんな時に、つま先だけれど両足が接地するという安心感は非常に高い(身長162cm)。

ただ、大きな問題をひとつ忘れていた。僕自身、混雑した道路に慣れていないのだ。静岡の田舎道(失礼)やサーキットに慣れきった身体には、渋滞はかなりキツかった。今まで足の付かないバイクでも立ちゴケなんてしたことがなかったのだけれど、1時間のノロノロ渋滞、エンジンから上ってくるかなりの発熱。もう少しで家に着くから・・と我慢していたのがアダになった。停止していたのにクラクラして中央分離帯の草むらにマシンを倒してしまった。幸いキズはバーエンドとレバーの先の擦り傷だけで軽くて良かったのだけれど、2年前の腰の手術もあってか不安は募るばかり。医師からはOKをもらっていたが、レントゲンを見るととても完全に骨が出来上がっているとは思えなかったのもある。力を入れるのが少し怖いのが、反射的に出る。

しかし、それも週に一度のライドで2ヶ月も経つと慣れてきて、この軽く振り回せる車体が楽しさをどんどん増加させてくれる。まだまだ渋滞になると、ローギアでも2,000回転を下回ると(速度だと20km/hくらい)ノッキングがする。半クラ不可避。ただ、このちょっと上で回転させているとツインのまさに「ドコドコ感」が楽しくてたまらない。速く走っても、ユックリ走っても楽しい。経験的には数十台のバイクに乗ってきているが、こんな楽しいバイクはなかったと思う。そういえば、アップライトなポジションのバイクも初めてかも。市販レーサーも含めると原付以外はセパレートハンドルのレーサータイプばかり乗っていたのに気がついた。ただ、僕は手足が短いので、ハンドルを握った状態でもそれなりに腕は伸びていて、軽い前傾姿勢になる。まあ、許容範囲だが。

公道でレーシーな走りはしないので、フレームの捩れも感じないが、軽量アップライトなポジション、おまけにネイキッドでも高速道路を走ってもなんの不安もない。キャスターは立ち気味だし、直線安定性はどうか?と思っていたが、GSXR750(79年モデル)に乗っていた頃よりも安定している。スタビリティが抜群に良いと感じたのだけれど、きっと、最近のバイクはどれもこんな感じなんだろうなぁ・・と思うと、年月の経過とバイクの進化、ついでに自分の年齢をヒシヒシと感じる。

そうそう、ミラーは全然見えない。道路ばかり映して、上方向の調整が少ないのだ。これ、他の人はどうしているんだろうか?僕は我慢できずに(そもそも怖い)社外品のミラーを付けたが、ミラー自体が軽量なためか振動でブレる。対策としては制振なわけで、とりあえず釣りで使う板鉛をステーの外側に巻きつけた(多分40gくらい)。これでだいぶ改善された。格好は悪くなったがw

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エンジン

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デスモドロミックは初体験・・でもない。多く乗ったバイクの中には昔のDUCATIもあったからだが、エンジンからはロッカーアームがカムを叩いているらしい音が結構する。最初は「ロッカーアームの調整がイマイチ?」なんて感じたが、他の車体の動画を見ても同様だし(SS950とか)、点検に出した時にも異音はないとディーラーのメカが言っていたのでそうなんだろう。実際、走るのにはまったく問題ない。

エンジンの特性的には低中速に振っているのは分かるが、そもそもツインなのだからこんなものだろう。むしろ、パワーバンドに入ってからのノンストレスなことが驚きに値する。ただ、極低速になると、高圧縮ツインにありがちなノッキングが盛大に発生する。基本的に2,000回転以下は使用する部分ではないだろう。4気筒のように、スロットルを閉じたままクラッチをユックリ繋げば発進できてしまうのとは対象的だ。大きな問題は渋滞にハマった時、昨今のクリーピングで進む車を追従する時だろう。ハイブリッド車の回生ブレーキと相まって、車の後ろをノロノロとついていくのは無理がある。これは、思い切って止まってしまう方が良い。下手に合わせようとすると車体のフラつきで怖い思いをするし、エンジンの発熱はかなりのもので、1時間なんてとても走っていられないのが良く分かった。

本来ならパワーバンドを使って・・とは思うものの、実際に使うのは公道では高速道路の加速区間のみだろう。1速でさえ途中でシフトアップを余儀なくさせられる速度域になる。やっぱりサーキットで・・とは思うものの、今でも戻りたい欲求はあるが、年齢を考えるとあまり無茶もしたくない。「美味しいところを使えない」というジレンマはあるものの、このエンジン自体は低中速でもとても楽しいので、不満はまったくない。使えないパワーは余計と言われるが、個人の感想では、経験則としてこの車格は高速での安定感、街乗りでもコントロール幅の大きさがメリットだと思う。良いエンジンだ。今まで乗ったことのあるバイクは100は届かなくてもそれに近い数はあると思う。それを考慮してもトップクラスだ。

ただ、発進時の加速、特にレスポンスが向上するSPORTSモードでは注意が必要かな。発進してすぐに曲がるような場面だ。不用意にクラッチを繋ぐと後ろから蹴飛ばされるような感覚でプッシュアンダーが出る。教習所通りに半クラを使って丁寧に発進するのがベターだが、まあ、すぐに慣れるから心配はいらないだろうけれど。それと、慣れないと加速で身体が持っていかれてアクセルを戻せなくなるのはこのアップライトなポジションのため、かなり注意が必要だ。かなり怖いしね。街中ではスロットルレスポンスに「間(ま)」のあるurbanかtouringが良いだろう。レインならurban一択かな。

とにかく、素晴らしく良いエンジンだ。どの回転域でも楽しめて、速さも軽さもある。悪い点をひとつあげるのなら、自分で整備できない点だろう。なにしろ、このエンジンを分解組み立てなどしたことがないから。ここは楽しみがひとつ減った感はある。やっぱり正規ディーラーにお願いするのがベストだと思う。

そうそう、ギア比は、当然1と2の間が離れ、3,4,5はまあ、普通。カタログ値を見れば若干クロスしていると見えるが、SSなんかみんなこんな感じだろう。すみません、ありきたりで。ワイドではないが、すごくクロスってほどでもない。このエンジンだと高回転を常用する必要もなく、中域のトルクがとてもフラットなためということもあるだろうか。繋がりは良い。ただ、6速が近すぎな気はする。5速と6速はもっと離れていても良いんじゃないだろうか。

ハンドリングとサスペンション

どのレビューを読んでも「軽量で素直」とあるが、それは否定しない。その通りだ。ただ、パーシャルで荷重を意識しないで曲がると、ほんの少しオーバーステアに感じる。僕自身が過去の経験で多少動いてる可能性もあるが。個人的には、重心位置が比較的高く、そこから短い車体と相まったタイヤの接地面までのロール軸はスポーツの味付けを強く感じる。ある程度の速度で定常円旋回をしている状態でのステアリングでの操舵、身体やブレーキ、アクセルを使った荷重移動にかなり敏感に反応する。これがまた面白い。操ってる感満載なのだ。その状態でも前後輪の接地感は高く、足元を掬われる感じもない。ただ、足つきを考慮してリアのイニシャルを2段下げてみたが、ハンドリングの影響は感じないが(普通なら応答性はわずかに落ちて、操舵が少し重く感じると思う)フロントの接地感は若干薄くなる。あくまで一重荷重での話だから、そこから荷重移動してやれば問題は軽微だし、いきなりスリップすることないだろうが、気持ち悪いので元に戻した。ちなみに、僕の体重は80kgあるので、本来ならイニシャルは上げるべきだろう。アンチスクワットの効果も考えれば。

サスペンションは前後ともスプリングレートが低く、ダンパーの伸び側は早め。公道での路面追従性を考えたらほぼベストだろう。というか好みでもある。が、サーキットだともう少し硬めにしたいところだ。(このサスはマルゾッキ?)

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上の写真はストロークセンサー代わりに付けたタイラップだが、ハードブレーキングでほぼ90%以上使う。これは当たり前だが、そうでなくても思った以上にストロークしているのが分かった。底付き感はないので大丈夫なんだが。ダンパーの速さから考えても、もしこのままサーキットに持って行ったら、鈴鹿の130R辺りだと怖いかも知れない。筑波なら最終コーナー入り口から、曲げのポイントだろうか。こうなると調整式のサスペンションが欲しいし、スプリングレートはもう少し上げたい。ただ、そうすると、公道での楽しさは半減するだろう。サーキットならパニガーレで。モンスターにこだわるならSPで。そんなことを言われている気がする。こいつはあくまで峠のワインディングを自分のペースで(あくまで他人に迷惑をかけない速度域で)楽しむバイクだろう。様々な要素がそう感じるための説得力になる。

ブレーキ関連

盲信と感じるかもだが、もう「さすがbrembo」としか言えない。新車当初の当たりがついていない状態はかなり甘いが、少し走るだけでガツンと効く。ただ、この「ガツン」は結構曲者で、ラフな操作を許してくれない。ステアリングに添えた腕から指を絞り込むように微妙な操作が必要だ。いきなり挟み込むようなブレーキはよろしくない。ある意味、乗り手に効果的な使い方を教えてくれている気もする。僕自身、最初はこの「ガツン」にかなり驚いた。渋滞でのノロノロ運転で意識が散漫になっている時は、未だにちょっと怖い。

逆にこのブレーキとABSの存在は絶大で、急制動での不安がまったくない。タイヤはスキッドすることもなく、大きなGを発生しつつ速度を強力に落としてくれる。モンスターでこれだから、パニガーレはもっと凄いのかな?と思ってしまう。リアも電子制御が効いてるのか、urbanかtouringモードなら後ろが浮き上がって不安定になることもほとんどない。今の電子制御は凄いね。これはリターンライダーとしてただただ過ぎた年月を感じ、驚くだけだ。

クイックシフター

電子制御と言えば、これも大きな進化だろう(まあ、体感できるという意味で。トラクションコントロールの方が恩恵は大きいだろうが)。実はクイックシフターは初体験。発進と停止はともかく、変速はほぼクラッチを握る必要がない。ただ、1速と2速の間が離れているので、ここでは若干変速ショックは大きめ。気になる人は2速へのシフトアップはクラッチを握っても良いだろう。そもそも、アシストアンドスリッパークラッチ、油圧式のおかげでクラッチレバー自体が軽い。渋滞はともかく、重さが苦痛になることはほぼないだろう。僕の年齢でも大丈夫だし。

クイックシフターの良いなと感じるところは、コーナーリング中にクラッチレバーを握ることによる外乱を与えず、バンクしたままでも大きなショックがなくシフトチェンジできるところだろう(これ、ducatiのクイックシフターのデキが良いからだが)。知らない道で、コーナーの奥のRがキツくなっていても姿勢を乱さずシフトダウンできる。街乗りだとあまり意味はないかもだけど、シフトアップも速くてスムーズ。乗る前には「こんなもん要らん」くらいに考えていたが、普段の使い勝手だけではなく、スポーツライディングにも寄与しているってのが分かった。やっぱり実際に体験してみないと分からないね。クイックシフターのないバイクでも、昔はシフトアップではクラッチはあまり使わなかったが(構造的に)、今はギアをいたわる意味で使うけど、シフトダウン時には特にありがたみを感じる。欲を言えば、1ダウン5アップではなく逆にしたいところだが、そのうち対応したリンケージが出るだろうからそれ待ちだ。

追記:最近、このままでもいい気がしてきた。

カスタム化

正直に言えば、元々あまり興味がない。パーツに限らず、純正のオイルやクーラントなどもそもそもメーカーが何回もテストを重ねて決めたものだ。もちろんコストダウンのための妥協はあるだろうと思うが、少なくとも公道を走るのに交換が必要でない限りは変更しないのが僕の考え方だ(もちろん調整できる部分は別として)。

で、上でも書いたが、すぐにミラーは変えた。3千円もしない安物だが、デザインを崩さず、視線移動も少なくて済むものを選んだ。本当なら多少高価でも振動が抑制できるものが良かったのだけれど、ネジが8mmで右側が逆ネジ(YAMAHAも逆ネジだったような。もちろん意味がある)という点で選択肢が少ない。

さすが安価なものはそれなり。とは思った。振動で結構ブレる。上に書いた通り、今はオモリで制振してあるので問題があるほどじゃない。まあ、いずれ気に入ったものが発売されたら変えるだろうが。

次はドラレコ。クルマで痛感してるので(かなり前から付けていて、2度ほど救われた)これもすぐに付けた。(追記:現在ではinsta360 X3が常時付けてある)特に最近の自転車は怖くて、一時停止はしないわ信号は無視するわで、クルマの運転でも怖い思いを何度もしている。バイクも当然必要だろう。ただ、車体のバッテリーをあまり虐めたくないので、モバイルバッテリーで動作する安価なものを買った。YouTuberになるわけでもないし、事故の場合に証明となる程度で十分だ。

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あとはレバーとかバーエンドを重くするとかはあるが、純正レバーがなかなかいい感じにカドが落としてあって絞り込んで握りやすい。倒した時のキズはあるが、本来、バイクはキズが付くものと思ってるので、ここもあまり気にならない。ただ、もしものために予備のレバーは用意しておいた方が良いかなとは思ってる。

あとはスクリーンの装着。これはまだ作業をしていないが、ネイキッドは初めてだし、場所柄、高速道路に乗ることが多いので一応用意はしてある。

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残りは…スライダーとかも考えたが、アレ、倒すだけでフレーム逝きそうで怖い。華美な装飾もいらないし、そのままが美しいと思う。まあ、スクリーン用意しちゃってるけど。

どうせ変えるなら、サスペンション自体を前後調整式(ぶっちゃけオーリンズに)にするとか、ステアリングダンパーはあった方が良いかも?とか考える。まあ、ステアリングダンパーはそもそもない方が操舵的には自然だとは思ってるが。

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結局スクリーンは付けたw

総じて

いやもう、大満足。貯金を切り崩して買った意義はあったし、一度は諦めたバイク人生も再びもどってきたのがなにより嬉しい。サーキットは機会があれば持ち込んでみたいが、体調を考えれば(そもそも僕は足が悪い)現実的ではないし、走り始めたらやっぱり攻めるだろうから、家族のことを考えるのなら、もうそれはやり切ったということで良いだろう。

そして、最初のモンスターは1993年だったかな?あの頃はレースにお金が掛かって買えなかったが、この歳になって買えるようにもなったし、何より腰の手術をしていただいた整形外科の医師に感謝している。もちろん支えてくれた家族にも。このボロボロの身体だと、あと、乗れても4〜5年というところだろう。そして最後に選んだバイクが、昔に憧れていたバイク(中身はかなり変わったが)というのも感慨深い。

とにかくこのバイクは、僕的な視点ではものすごく楽しいし、良い。考えられるベストだと思う。実は、年齢を考えてHONDA CB250Rも考えたし(まあ、家族用に2022モデルは買ったんだけど)、SUZUKIのSV650も今でもたまに「こっちにしても良かったかなぁ…」とは思う。それでも、今はコイツに、モンスターに乗るんだ!という意識と高揚感は手放したくない。そんなバイクだと思う。