南瓜の馬車 〜いいわけでも許して〜

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DUCATI MONSTER+(還暦リターンライダーの挑戦)

試乗してオーダーしたのが12月下旬のこと。それから8ヶ月が経過し、やっとMONSTERが納車されたのでちょっと書いてみよう。とは言え、様々なインプレッションはすでに多くネットにあがっているので、簡単に書こうと思う。

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エンジンフィール

半分はこれで決めたと言って良い。小気味よくレスポンス良く回るL型ツインのフィールは、普通に街中を流していても爽快だ。何もDUCATIが初めてなわけじゃないが、何しろ最後に乗ったのはDUCATI  F1というかなり以前の機種で、あまり良い印象は残っていない。低回転のトルクが薄く、鼓動感はあるものの、かなり下にセットされたステアリングは少なくとも街中で楽しいマシンではなかった。あれは1980年代後半のことだったから、すでに40年以上経っている。あれからDUCATIは随分庶民的?になったなぁ・・と思ったものだ。もちろん、Panigaleとかだとまた印象は違うのだろうが。

低回転でトルクがあるとは言っても、クラッチミートはパラレル4のように粘らないので、少し回転を上げ気味に繋がないとストールする。しかし、一旦走り始めればハジけるようなレスポンスのツインエンジンは強力なトルクであっという間に吹け上がる。慣らし運転などしなくても、公道では高回転を使えばあっという間に制限速度を超えてしまう。では楽しくないのでは?と思えるかも知れないが、3,000回転を下回ってくると多少不機嫌なノックが返ってくるが、そこから常用域に上げてしまえばスロットル開度にリニアなレスポンスの良さにと小気味良い鼓動感とサウンドに魅了される。実によくできたエンジンだ。試乗では7,000回転より上も使ってみたが、その辺りからサウンドが一変し、カーンと甲高いレーシーなサウンドを楽しめる。何度も書くが、これが普通に流していても楽しいというのは素晴らしいと思う。

足回り

以前に試乗したマシンは、タイヤにサーキット走行の名残があって、かなり走り込んだのが分かる車体だった。ブレーキのあたりもすでについていて、不用意にフロントブレーキを握り込むとガツンと効いて大きくフロントが沈み込む。が、納車されたばかりのこの車体はまだあたりがついていないのか、レバーを握り始めてからフルブレーキ(をする場面はほぼ無かったが)までが少し甘い。それでも、僕の知っているどのマシンよりも高い制動力を誇る。ブレンボ恐るべし。今回は新車の状態が良かったのか、慣れないマシンでもブレーキングが非常にコントローラブルで、これから先にマシンに慣れ、ブレーキにあたりがついた頃にはかなりの武器(安全性としての)になるだろう。

サスペンションは前後ともにスプリングレートが低い・・というか柔らかい。これは試乗車も同じだったが、僕の体重(80kg)で跨った時点で2割ほど沈む。慣れたらもう少し沈むだろう。個人的に僕の好みは、スプリングは柔らかめ、ダンパーは伸び側が少し早めなのが好きだ。基本的にはタイヤの接地感がどの程度感じられるかで決めてる。身体はあまり落とさない。コントロール性が落ちると思えるからだ。これは、まだ20代の頃に50kgの体重でサーキットを走るのには、荷重移動の感覚が分かりやすかったためだ。たまに「膝擦り」を目的にした動画を見るが、正直、危ないし馬鹿馬鹿しいものに感じる(今はなんでも動画にするからか、中味スカスカなのが多いね)。実際に今でもコーナーではエイペックス付近までブレーキを握って荷重をかけてフロントを沈ませ、そこから徐々に接地感を気にしながらリリース(これが超重要)して、エイペックスに到達したらスロットルを開けてリアに荷重をかけて立ち上がるスタイルが身についている。もちろん、今の体重ならステップへの荷重、シート上での体重の移動でもサーキットでないのなら充分だと思うが、何しろ身体が勝手にそう動くので簡単に変わらない。

そういえば、試乗車の時にはアーバンモードで走ったが、交差点で曲がる時に少しアンダー気味だなと思った。単純に25年ぶりだったのが主な要因だろうが、どうも試乗車には変なクセというか、おそらくサーキットをかなり走ったと思われるタイヤの問題だろうが意識的にマシンを倒しこむ必要があった。今回はツーリングモードメインで走ったが、アンダーなどまったくなく、「曲がる」という意識だけで素直に車体が曲がってくれる。フロントの接地感もシッカリあるのが良い。ちょっと意地悪にコーナーの奥からステア操作でマシンを寝かし込むと、そこから素直にインに寄っていく。いや、楽しい。自由自在じゃないか、これ。まるで250ccのバイクに乗ってるみたいな軽さだ。スプリングレートとダンパーの組合せが自身に合っていて、乗り心地もとても良く、ハネることもない(80kgも体重あるのに)。欲を言えば、ステアリングダンパーを付けて、もう少し粘りのあるハンドリングにしたい。

そもそも、最近の大排気量者に限らず、スポーツバイクはサスペンションが硬すぎると思う。サーキットのようにGが強くかかる場所ならまだ良いだろうが、それを踏まえても最初は柔らかめの設定から(調整式なら・・だが)入り、転ばないように注意しながら徐々に硬くしていってベストのポジションを見付けるのが良いと思う。というか、僕が若い頃にはそう教えられたし(阿部孝夫さんが元気だった頃だなぁ)、自分でもそう感じていた。今のスーパースポーツにはフォークの沈み具合をみるセンサーが最初から付いているマシンもあるくらいだし、「スーパースポーツの足回りは硬めて」というのはある程度走り込んでからのことだと思う。例えば鈴鹿の130R辺りだと、ダンパーが早すぎるとヨーイングが出やすい。どう操作したらどう動く。そういったマシンの挙動を物理的な目で見るというのはとても大切なことだ。これはサーキットを走らない人にも言える。もちろん、一番大切なのは、自制心とモラルだろうけどね。

ポジション

身長162cmの僕でも・・もちろん足はベッタリってわけにはいかないが、両足とも少しチカラを入れられるくらいには着く。要は、僕は短足なのだ。それが両足届くんだからこれはすごい。購入を決心したトリガーはここかも。実は、同日にもう一台のバイクも納車されたが、こちらは2022年モデルのHONDA CB250Rだが、こっちはシート下にシートフレームが存在を主張していて、太った僕の腿が邪魔をして片足がやっと着く。若い頃ならこれで充分だが、60歳を間近に控えた僕にはちょっと不安。もちろん車体は軽いし転がすことは無いんだけど、久しぶりに両足が着く安心に出会った気がする。(写真は家人)

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僕は子供の頃からレースをやっていた叔父の影響でバイクに乗っていたが、その後に従兄弟がバイク屋兼レーシングチームを作ったので、そのツテで多くのバイクに乗る機会に恵まれた。当時はキャスターの寝たアメリカンのハンドリングが好きじゃなくて、そっちは乗ったことがないが、有名どころのマシンには大抵乗っている。最後に所有していたのはSUZUKI GSXR750(89年モデル)だが、アレはアレで楽しかったけれど、一番乗りやすかったのはKawasaki GPZ600Rだ。これも両足が着く安心感、若干ソフトな味付けのスプリングで乗りやすかった。今となってはダンパーはプアだったよなぁ・・とは思うものの、高速安定性はGSXR以上で、実に扱いやすいバイクだった。両足が着くのはそれ以来じゃないだろうか。

今までMONSTERを諦めていた理由のひとつにハンドルバーの遠さにある。まあ、交換すれば良いんだけどさ。もう10cm高くて、もう10cm近ければなぁ・・と思っていたが、今回のMONSTERはそれに近いポジションになっている。チビの僕が乗るとそれでも少々前傾姿勢になるが、腰に負担がない程度で、むしろ積極的なライディングに適した位置にある。

昨今の電子制御や装備

ABSだけは以前に試したことがある。もうね、目から鱗だね、あれ。必須だと思ったよ。フレディやマルケス、ストーナーみたいなライダーは別として、フロントを意識的にスキッドさせて走る人なんてあまりいないだろう。リアは場合によってスキッドさせたいこともあるが、ABSは本当にテクノロジーの良い結実だなと感じた。トラクションコントロールや姿勢制御系のものは今の所イマイチ体感できてないが、単純に考えても雨の日や緊急事態の回避などに役立ちそうな気はする。

問題なのは熱さかも

10分も走ってると膝の付近がかなり熱くなってくる。L型のリアシリンダーが、まんま膝の横にあるのだから、これはもうね、夏は我慢しろってことね。(涙)

そもそもタンクには「5分以上アイドリングで放置するな」って書いたステッカーが貼ってある。市販車とは思えない部分だ。さすがイタリア車(褒めてない)。これはもうどうしようもないだろう。乗る人がウェアなりで工夫するしかない。都内の混雑とか修行僧かってレベルだね。「心頭滅却すれば火もまた涼し」。もちろん僕には到底達することのできない領域だね。いやまあ、みんなそうか。

総じて

大満足。1993年(だったかな)に初代MONSTERが発表された時には、わざわざ実車を見に行って諦めた経緯もあるし、やっと自分が乗れるMONSTERがこんな良い形で戻ってくるなんて思ってもみなかった。そう、ある種の憧れだったし、人生はもう終盤に入ってるのが残念だけど、それでも最後にこんなプレゼントが用意されているとは思いもしなかった。僕の最後のバイク。しかし、こうなってくるとサーキットに持ち込みたくなるなぁ・・。サーキットと言えば、先日、友人であるHONDA  DREAMの店長が筑波サーキットに行くって言うので見に行ったが、ちょっと危ない感じ。なんというか、レベルが違う人たちが混走している状態ってこんな感じになるんだなと。僕の頃はフリー走行はレースのための練習、楽しくサーキットを走りたい人はショップ主催の走行会って感じに棲み分けられていた。今でもレベルによって分けられていると聞いたけど、個々のレベルの差が結構あるね。見ていて危ないなと思った。

バイクに乗るには、繰り返すけれど「自制心とモラル」が必要で、そこで自身の技術を磨いていくんだと思う。皆さんも安全で楽しいバイクライフを送ってください。

追記

同日に納車されたCB250Rだけど、家族が乗った感じだと旧型よりも足回りがしなやかになったと言っていた。フロントはともかく、リアって変更あったっけ?こちらも機会があったらレビューしてみたい。印象的だったのは、スリッパークラッチによるクラッチレバーの軽さかな。思っていた5倍は軽いと思ったよ、マジで。これも良いバイクだね。