南瓜の馬車 〜いいわけでも許して〜

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【ネタばれあり】新しい時代に突入した「スターウォーズ 最後のジェダイ」

先行チケットが確保できず、さらに週末だと良い席が取れなくて、やっと昨夜の最後の上映で「スターウォーズ 最後のジェダイ」を観てきた。

ファーストオーダーとの死闘の末、やっとルークの所在を突き止めた反乱軍。悲しみと失意で孤独に過ごすルークに、レイが会いに行く。しかし、ルークの決意は固く、彼を戦線に復帰させることには困難を極めた。一方、レイとの戦いから復帰したカイロ・レンには迷いがあった。光と闇。その合間で揺れているように見えたレンに、レイは手を差し伸べる。しかし、彼もまた心の葛藤と共に、己の存在意義を貫こうとする。そして、ファーストオーダーの激しい攻撃に、反乱軍は壊滅状態に追い込まれていく・・。

最初に感じたことは、映画の本編とは関係なく、「映画はやっぱり映画館で観るのが良い!」ってことだ。IMAXシアターにて、この映像と、この音響をナマで味わい、物語への没入は圧倒的なものがある。テレビで観るのとは大違いであることを、この映画で実感する。また、恒例になったオープニングの瞬間、毎回訪れる心の歓喜。いやぁ、今回も観られて良かったと感じる至福の一瞬だ。

さて、多くの映画ファンがこの映画に対する愛着を持ち、そして今後の展開をアレコレと想像したことと思う。僕もそのひとりだ。だが、その予想は大方において覆された。もちろん、語られなかった事実、霧に隠されながらもその断片を見せられた映像はあるが、レイの両親の正体、スノークの正体などはハッキリとしなかった。そのあたりは今までのスターウォーズでも、2作目には3作目への大円団のために用意された舞台装置だとも思える。つまり、「何が真実だったのか、そしてどこへ向かうのか」は混迷を極める。正直なところ、映画を観た直後にはあらゆる情報が脳を圧迫してるかのように混乱し、しばらく映画全体をアタマで考えることができなかった。

さて、今回の物語は、レイの覚醒とレンとの関係について、レジスタンスの戦い、そしてルークの過去と未来が中心となっていると思う。その辺のついて感じたことをちょっと書いてみよう。ネタばれにはなるが、これを読んだから映画がつまらなくなる・・そんなタイプの映画でもないと思う。

レイの覚醒とレンとの関係

この2人のフォースは圧倒的だ。過去にもこれだけの力を見せたジェダイ/シスはいなかっただろう。今回は、穏やかな最期を迎える成長したルークの力もものすごいが、やっぱりレイとレンの2人は図抜けている。遠く離れた銀河の彼方で意思の疏通をはかる2人。レンはレイアとハン・ソロを両親に持つわけだから、ある意味当然とも言えるが、レイのこの凄まじい力はなんだろうか?レンが語ったレイの両親の話はにわかに信じがたい。やはり強力なジェダイ騎士の力を受け継いだとしか思えないのだ。

そして、そのレイは過去とジェダイ、さらに言えば自分自身への疑問を抱きつつレンを光に導こうとし、レンはレイを強大な闇の仲間にしようとする。お互いが自身の持つ「真実と希望」のために。いや、レイの場合にはその「真実」もまだ曖昧なのだろうと思えるシーンが数多く出現する。同じような強大な力を持ち、おそらくその血筋にもよるのだろうが、強烈に惹き合う2人が、スノークとの戦いに共闘することはある種の必然なのだとも思える。お互いの未来への共通の敵なのである。ただ、スノークがその強大な力を見せつつも、思ったよりも呆気なく倒れてしまったのはちょっと意外だったかなぁ・・。出自も今回では分からないままだったし。「メイス・ウインドゥの将来の姿」と考えたのだけれど、立体映像ではないスノークを見た時には、「ちょっと違うかな・・」と多くの人は感じただろう。次回作でまた覆される気もしないことはないが、いまひとつ、その存在感に欠けてしまった。逆に言えば、レイとレンが図抜けていたとも言えるんだけど。

気になるのは、レイとレンがお互いにその光と闇を持ち、敵対しつつもその将来が、関係が、どういう具合いに収束していくかだろう。印象的だったのが、レンが、母親の乗る艦のブリッジへの攻撃を躊躇するシーン。「闇」には落ちきれない、それだけの「光」がまだ彼には残っている(というかこのシーン、レイアが初めて明確にフォースを使う場面でもある。圧巻。)という証左とも言えるシーンだろう。うーん、また2年待たないと結果が明らかにされないのがもどかしい。まあ、いつものスターウォーズ2作目にあることだけれど。いずれにしろ、勧善懲悪気味に分かれていたこの2人が、今回はお互いにグレーな部分を混ぜ合わせながら触れ合って行くことが、銀河の未来に大きく関わってくるのだろうと思う。実に楽しみだ。

ルークの過去と未来

「フォースの覚醒」でわずかに描かれたルークの過去。しかし、その事実は依然、曖昧なままだったのだが、今作でかなりの部分が明らかになる。レンの強大なフォースに脅威し、その中に闇を内包している事実に驚愕したルーク。そしてその未来に恐怖し、レンを殺害しようとして失敗する。自身が育てあげた他のジェダイと共に。しかし、皮肉にもこの過去が現在のレンを作ってしまう端緒になったことも事実だろう。ジェダイに希望を失い、辺境の星で隠遁していたルーク。その姿はどことなくEP2でのヨーダを思い起こさせる。そのルークがレイの存在により、再び未来のために立ち上がる・・と言っても戦士としてではなく、あくまでフォースの導き手、そして未来への希望を繋ぐために。

最後のレンとの対峙の際に見せるルークの力もまた圧倒的だ。ジェダイ騎士として成長したヤング・スカイウォーカーの老練した姿は、過去からのファンには垂涎ものだろう。そして彼も、ヨーダやオビ=ワンと同じように、未来に希望を示しつつ、表舞台から降りて行く。過去からのファンにとって、ある種の予定調和でありつつ、その姿にはやはり感動する。

レジスタンスの戦い

ファーストオーダーの力の前に、ジリ貧に追い詰められていくレジスタンス。戦局を見つめ、部隊を率いていくレイア、自身の信念によって遮二無二に突き進むポー、そして新たに加わったフィン(今回は活躍が少なかった気もするが)とレイ、そして未来を示したルーク。そして、あらためて強いフォースを示し、指揮官としての能力を見せたレイアや、傷付いたレイアを補佐し、敵艦隊に特攻する副指揮官?(名前を失念)の「上に立つものの立ち方」みたいなものを強烈に感じた。彼らが、多くの仲間を失いつつも、未来に希望を繋いだのが今作のポイントだろう。

そして、今回注目したいのがローズ役を演じたケリー・マリー・トランの存在だろう。アジア系?の容姿が今までのスターウォーズにはいなかったキャラクターであり、その愛嬌のある外見と見事な存在感。今まで知らなかった俳優であり、今回の様々な事前のプロモーションでも明らかにされなかった彼女の存在は、とても大きかった。同じ整備工だった彼女の姉が命を賭して守ったレジスタンス。そして、その遺志を受け継いだ彼女は、今後の更なる活躍に期待している。

娯楽大作としての映画の立ち位置からも、最終的な勝利を予想させるレジスタンスの戦いだが、それをどうやって成し遂げるのか、また、その渦中に運命を翻弄されるレイやレン、フィン、そして多くのキャラクターたちの予想できない未来・・次作だが・・にドキドキワクワクだ。

 

映画全体に感じたこともちょっとだけ。

まずはその上映時間の長さ。過去の経緯や、今後の展開への布石も含めて盛りだくさんな内容で、150分という長丁場もスターウォーズ・ファンとしたらそれほど長いとは思わないだろう。それよりも、あまりに盛りだくさんでアタマが追いていかない。途中で何度も脳内整理を行いつつ、今のシーンの意味するところは?これはどういう風に展開していく?と、どうしても大忙しになってしまう。映画にドップリ浸かって楽しめば良いじゃないか・・とはいつも思っているけれど、今回は考えることなくしては次のシーンの意味を読み取ることができない。ある意味、何度か観る方が楽しめる映画かな・・と感じた。まあ、ファンとしてはそれは喜びにもなるんだろうけどね。

そして、冒頭にも書いたが、やっぱり映画館で観た方が絶対に良いと思わせる映画だ。それは音響や映像もそうだが、この「スターウォーズの世界」に浸るには、自宅シアターでは無理だと思う。そして、多くの観衆の中にあって、映画の中の一人として没入できる幸せ。これは絶対に映画館でないと味わえない。

また、今回は新たに愛らしいキャラクターがいくつか出てくる。それは予告編でも垣間見えるのだけれど、こういったキャラクターの楽しみもある。あれよあれよと急坂を転げ落ちるようなスピード感の映画に追いていくのも大変だが、それが逆にこの物語の中に前のめりにされる要素でもあるんじゃないかな。

昨夜の今朝で、まだまだちゃんとアタマの整理ができていないし、書き足りないこともたくさん。でも、やっぱりこれだけは言える。スターウォーズは特別な映画なんだと。

最後に、この映画を最後に急逝した、レイアことキャリー・フィッシャーに哀悼を捧げたい。彼女なくしてはこの作品はなかったことだろう。これからのスターウォーズ・サーガを見守って欲しいな・・。