南瓜の馬車 〜いいわけでも許して〜

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「緻密な音」と表現したい(カナルワークス CW-L52)

発表から一年、一聴惚れ?してから悩み続け、とうとう買ってしまった「カナルワークス CW-L52」。悩んでいた理由はいくつかある。ひとつは今の「CW-L15」で物足りないとまでは思っていなかったこと、価格が倍近いことが主なふたつだ。試聴に試聴を繰り返すたびにL15に物足りなさを感じ、それも自宅に戻って翌日の通勤に使ってみればなんの不満もない。その繰り返しだったのだけれど、もう50代も半ばに差し掛かっている自分の耳がいつまでもこのままであるわけもなく、楽しめるウチに楽しもう・・と思ったのが誕生日を間近に控えた今年のゴールデンウィークのことだった。それがもう届いたので簡単なレビューを書いてみたい。

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音の傾向など

そもそもネット上にCW-L52のレビューが極端に少なく、試聴機ではどうしてもイヤーチップをはめ込んでいる状況から、実際に自分の耳に合わせたシェルの場合はどうなるのか?という不安は拭えなかった。これは誰でも感じることだろう。だからこういうレビューは選択の一助として成り得るのだと思う。例えば、L15の時に「高域寄りのフラット」というネットの評判があり、実際に試聴機でもそういう印象を持った。しかし、実際に自分の耳の形にフィットしたシェルの完成品では「高域寄り」という印象はまったくない。むしろ、微妙に低域にフォーカスの当たったフラットというのが今の感想である。この辺が試聴機と実機との難しさでもあるだろう。

さて、CW-L52だが、結論から言うと試聴機で持った印象そのままだ。以前のエントリーでも書いた気がするが、L15の時に「もう少し高域が伸びてくれたら」という印象があった。しかしL52はワイドレンジ化したように低域から高域まで非常によく伸びる。音の精細感はL15よりかなりグレードアップしており、ここが試聴の度に「買い足そうか?」と悩んだ点でもある。僕的には「緻密な音」と表現したいところで、個々の音の粒立ちが非常に明確なのに、それでいてどこか一部分を主張するところがない。L15と同様にドライバ間のクロスオーバーが調教された、ドライバ数を感じさせないとてもシルキーな音と感じる。人によっては「線が細い」とも感じるかも知れないが。実際、中低域に関して言えばL15の芯の太い音の方が好きだと言う人が多いとも思える。まあ、他のメーカーの機種の方が更に低域の量感は多く、僕はここがとても苦手な部分だ。L52にはPSTSモデル(抵抗を差し替えて低域の量感を調整する機構)も存在するわけで、一般にはそれで調整するのだろう。

面白いなと思ったのは、例えば音の粒立ちが明瞭なのに、ドラムのリムを叩く音なんかはL15の方がクッキリと鳴るし、スネアの響きも同様だ。それでいてハイハットの音の明瞭さ、繊細さはL52の方がズッと上だ。ただ、どちらが自然か?と言われるとL52の方だと僕には思える。この辺、音楽の表現として全体のまとまりはどちらが上とか下か?は無意味だろう。他の製品でも同様に言えることで、何度も連呼しているが「音質は好み」だからだ。

L15とハッキリとした違いがあるのはボーカルだろう。L15に比べ、L52はボーカルが半歩・・いや、一歩くらい後ろに下がった印象がある。ボーカルをシッカリと聞きたい人にはL15の方が好みかも知れないが、こうやって比べてみると僕にはL15のボーカルは近すぎる。全体的なバランスとしてL52の方が自然だ。この辺も好みの範疇であって、使い分けができる要素かも知れないなと思う。ただ、これも以前に書いたがSadeの様にメロディの海に浸る・・みたいな曲の場合、L15の主張し過ぎるボーカルは全体の雰囲気を異質なものにしてしまう。実際、オールラウンダーであるL15でもクラシックの表現はL52にはまったく敵わない。広がったホールに個々の楽器が屹立し、それでいて全体の音楽的表現を損なわない。この辺が買い足しを決意したひとつの重要な要素でもある。実際、届いた実機を聴き、改めてクラシックの表現力の高さに満足感を覚える。

かといって、ロックやポップスが苦手なわけでもないところもこの機種の美点だ。どんなジャンルでもそつなく、そして美しく聴かせてくれる。静謐なものは静謐に、激しいものは激しく、ここがフラットな機種の良いところだとも思う。人によって低域や高域が物足りなければイコライザーに頼るという手もあるかも知れない。逆に、ジャンルが固定されていてEDMなどを聴くのなら、CW-L33LVの方が圧倒的なライブ感があると思う。ただ、それが「自然な音」なのかと言われると疑問符が沸き、最終的にはフラットな機種を選ぶのが僕の耳でもある。

音場はL15に比べると広いが、APEXや空気孔を持つ機種に比べるとやはり開放感の差はある。だが、これだけでも音楽的な表現にはかなり影響があるようで、音楽全体の見通しや抜けの良さは格段に上がった。これは予想外のことであって(自分用のシェルだと狭くなると思っていた)、大きく歓迎できるポイントでもある。この辺はシェルの形状の違いも多少は影響しているハズで、これは後述したい。

とりあえず一日聴き込んでみた感想を書いてみた。世の中が多ドラに商品価値を見いだす中、「答えはひとつではない」と言い切り、多種多様な製品を作っているのがカナルワークスの面白い点だと思う。また、国産であることも納期が短いこと、あれこれと相談がし易い点も大きな美点であると思う。

シェルデザイン

今回は中のドライバが見えるようにとクリア系の色にすることは当初から決めていた。ただ、クリア系でもバリエーションが増えたことで悩みが増えた。CW-L15の時にはオプションでカーボンプレートを選んだりもしたのだけれど、そうすると「普通のイヤホン」みたいな気がして、カスタムIEMの「一品モノ」の印象が薄いと感じてしまったこともある。

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で、悩んだあげく「ガラス」と命名されたシェルを選んだのだが・・「ガラス」というよりは「ライトグリーン」じゃね?これ。光の加減や、手で持った時にはガラスっぽさがあるのだけれど、白地のモノの上に置くと緑っぽい。うーん、ダーク系にすれば良かったかなぁ・・でも、それだとメカメカしさが無くなるし・・。かといって、普通のクリアは面白さに欠けるし、他の「サクラ」や「アクアマリン」はちょっと欲しいイメージと違う。まあ、ここは今更だし、以前にカーボンプレートを選択した時にも「結局、自分では見えないし」みたいなことを感じたわけであって、これを選択したわけで。ただ、木製のテーブルの上に置いてあると普通のクリアよりもズッと高級感があるし、耳に嵌めている状態でも同様だ。鏡に映った自分の姿を見て(もちろんみっともない写真は載せないが (^_^;)納得した。メーカーサイドも実際に装着した写真を載せれば良いのに・・なんてことを思ったり。

ケーブルは迷わずブラック。単純に白やシルバーなどの白色系が好きじゃないから。関係ないが、電話線に使っている通信ケーブルは、その被覆色によってインピーダンスが変わる(近接効果だったか?)関係で、単位辺りの撚り回数が異なっている。また、耐候性も違ったはずだ。細かいことは忘れてしまったが、その辺でもブラック皮膜の方が有意だと漠然と感じている。もちろんこれは「個人的な見解/誤解」であるとは思う。

そうそう、もうひとつ。今回もカナルワークスのロゴを入れた。以前は「CW」と大きく書かれたものだけだったのが、今回は「canal works」という文字のロゴが選択できた。これ、どこにも書かれていなくて、オーダー票に「CW」と「canal works」と別々の表記があって気が付いた。参考画像が無いのでカナルワークスさんに直にメールしたところ、サンプルの画像をすぐにご返信いただいた。この辺の即応性が「やっぱ、国産の良さだなぁ〜」と感じた部分でもある。

フィット感

L15を作った際には、若干、左側だけがユルくて自分でリフィットしたという経緯がある。今になって思えば、あれはインプレッション採取時に問題があったのかな?と推測する他ないが、L15を使ってキツメにしたり、ユルメにしたりと試行錯誤をした。最初はキツメにしたが、長時間使用していると耳に痛みというか「疲れ」のような症状が出ることが分かった。ユルくすればもちろん遮音性が落ちる。この辺は好みにもよると思うのだけれど、カナルワークスの製品は「インプレッションのまま」というか、人によってはユルいと感じる範疇かも知れない。だが、L15で試しているうちに、僕にはユルメの方が良いのだと分かった。顔を上に向けると微妙に隙間ができるが、正面、またはスマホに目を落としていると調度良いあんばいだ。ちなみに、割り箸もバイトブロックも使わなかった。基本的に音楽の鑑賞をするのみであるので口を開く必要はないと考えたのだ。結果的に、今回のフィット感は絶妙だ。長時間の装着でも「疲れ」をほとんど感じないし、それでいて遮音性も充分だ。

また、前回のL15と比べると、ノズルが若干短いことも関係しているかも知れない。

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こうやって並べてみると、L15の方はかなり長い。また、L52ではノイズの先端が微妙にエッジを落として丸くなっている。これがキツさを感じない要因のひとつであることも考えられる。実を言うと、L52意外に、ONKYOの特殊な形状のカスタムIEMにもかなり惹かれた。最終的に音質が許容範囲外ということで断念したが、同じ構成でノズルやシェルの形状を微妙に変えてみたい誘惑がある。まあ、この辺は個人ではなかなか試すことができないことであり、最適解としてメーカーが用意したのがこの形状なのだとは思うのだが。

まとめ

さて、総括してみると、イヤホンにこれだけの金額を出す価値があるのか?ということになるのだと思う。僕の場合は、精神的なストレスで環境音にかなり過敏になっている。気分が悪くなるほどだ。実は、その辺は投薬で緩和しているのだが、それと同様にこういったイヤホンは僕にとっての「鎧(よろい)」なのである。なので、高い遮音性は必須、快適性も欲しい、音質は自分の好きなものでないと使うこともままならないだろう。そういう意味でも、今回のCW-L52には大満足している。

僕は今まで多ドラの、音数の多いザワついた音が大嫌いだった。あえて書けば、数機種・・例えば64audioが1964audioと呼ばれていた頃の「V8」が、ある意味僕の到達点でもあった。それも生産完了品となり、他に選択肢が無くなったところへこのCW-L52の登場である。先ほども書いたけれど、カナルワークスのように多種多様の機種を開発してくれるメーカーはとても有り難い。音質は好みなのだ。誰にでも他人と違う「自分の好きな音」がある。

自分の欲しい音を出すこの機種がお財布に優しいこともある。一家5人(含む、猫3匹)の経済事情を鑑みれば、イヤホンに30万も40万も出せないという事情もある。「必要であるのなら価格など意味はない」ということは分かっていても、財布の中身がそれで増えるわけでもない。そういう意味でも今回、たまたま自分の好きな音質の製品が、思ったよりも安価で手に入ったこと・・と今は思える・・は、僕にとっても、家庭にとっても良かったのだと思う。さて、次は家人のカスタムIEMの買い足し。本人は64audioのA8が良いと言っているが、さて、どうなることやら・・。