南瓜の馬車 〜いいわけでも許して〜

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「アクション映画」でどうして眠くなるのかやっと分かった(映画:トリプルX:再起動)

いやね、前から不思議だったんだよ。映画を観ていて、アクションシーンになると眠くなる。で、今回この「トリプルX:再起動」を観ていてそれがやっと分かった気がする。

この映画、売りはやっぱりアクションシーンなので、ストーリーも敢えて書かないし、ネタバレも無し。ヴィン・ディーゼルがある意味、他の役者の持っていない一種の「味」みたいなものがあるのは分かる。でもそれは、あくまで個人的にだけれどブルース・ウィルスとダブるし、どちらかと言うと一見頼りなさそうにも見えるブルース・ウィリスが、アクションシーンになると輝きを魅せるその意外性の方が勝っている気がする。ただ、これだけシリーズ化されているとなると、やっぱり人気はあるわけで、それが好きな人が多いということだろう。ただ、僕はやっぱり睡魔との闘いになる。

で、「どうしてアクション映画で眠くなるのか?」が本題なんだけれど、それは、「このアクションシーンはCG/VFXかも知れない」とどうしても考えてしまうこと。または、「ひょっとしたらスタントマン?」と思ってしまうことだ。ヴィン・ディーゼルのアクションは色々とサイト検索をしても、本人がやっていると書いてあるものもあれば、CGだと言う人もいて、僕自身が映画を観ていてもそれは分からない。ただ、それがフェイクかも?と思った時点で僕から興味という糸が切れてしまうわけだ。

それが例えば濃密な会話のシーンだったりしたら違うだろうし、日本語だったら直接的に耳に入って脳が理解するのが早いわけで、余計に眠くならない。電車や職場での昼寝で、周囲の喧噪で眠れないケースというのは、その内容に脳が興味を示すからだろう。今はCGもVFXも格段に進歩していて、一見して「それ」と分からない。だからこそ、アクションやSFなどではリアリティ以前に某かのトリッキーさが必要になるのだと思う。だが、そういったトリッキーさは、映画の主題とはかけ離れてしまうことが多い。そうなるとやっぱり眠気を抑えることが困難になってくる。

先日、直木賞を獲得した恩田陸さんの「蜜蜂と遠雷」にこんな会話がある。

今のハリウッドは、映画じゃなくてアトラクションなんだ

と。正確じゃないかも知れないが、そういう趣旨の会話がある。これは言い得て妙だなと感じた。アトラクションが悪いと言っているわけじゃない。それだって充分に楽しみとしてアリだろうし、僕が好きなアイアンマンやキャプテン・アメリカ、スター・トレックなんかもそうだろう。だけれど、それがストーリーのメインストリームから過剰に放出されたり、どうも既視感を覚えるようなものはやっぱり退屈なアトラクションなんだと思う。

ただ、唯一光るものも・・というか、光るアクション俳優がいる。それは、「ローグ・ワン」にも出ていたドニー・イェンだ。調べてみると、かなり以前から様々な香港映画に出演し、アクション監督としても辣腕を振るっていることが分かる。こちらも本人がやっていると言うよりは、アクションの設計をしているようだが、そのキレは見事だと思う。

年寄り臭いことを・・と思われるかも知れないが、アクションというとブルース・リーや、自身の身体を張ってのアクションをするジャッキー・チェンの全盛期を思い出す。もちろん、カーチェイスなんかも昔の映画では実際にクルマを走らせて撮影を工夫していた。最近はその辺の「リアリティ」に拘る監督さんの作品も耳にするが、こう・・なんというか・・トリッキーでも良いけれど、見たこともない斬新で、心を揺さぶられるようなアクションを見たい。そう、眠くならないようなね。

 一応、書いておくと「トリプルエックス:再起動」がダメな映画だとは一言も書いてない。アクション映画として、音響と映像は充分に楽しめる作品だったと思う。こういう映画はやっぱり劇場で観たいよね。