南瓜の馬車 〜いいわけでも許して〜

猫とガジェットと映画と小説の毎日です。

朝からの憤り(白杖の女性に出会って)

朝から怒っているのである。

一昨日のこと、以下の事故があった。

 JR蕨駅で人身事故 盲導犬連れた男性が転落…電車と接触、死亡

この方、確認はできていないが顔見知りの方だと思う。ニュースを見たときにとてもショックを受けた。名前も知らない。ご自宅も分からない。だが、蕨駅でこの時間帯に該当する人はこの人しか覚えがないからだ。僕の勝手な想像であって欲しい。もちろん、この方に限らず人の命が失われたこと自体悲しいことだ。

とても礼儀正しい方だ。初めてエレベーターで一緒になった時に「おはようございます」とお声掛けをしてから、会えば挨拶をするようになった。出勤と帰宅の時間帯が似ていることでよく顔を合わせることがあった。「私になにかお手伝いできることはありますか?」と言えば、「いえ、大丈夫です。ご親切にありがとうございます。」と焦点の合わない目でにこりと微笑み返してくる方だ。落ち着いた容貌と背筋の伸びた良い姿勢、そしてその礼節を持ち合わせた会話ができる方なので、自然と会えば挨拶を交わすようになった。あちらも僕の声の質や、杖をついている音で同じ人だとは気付いていたと思う。

家人にその話をしたら家人も同様だったらしい。家人は介護の勉強をし、資格を持っている。その辺りの対応も手馴れているのだろう。そもそも家人は「良い人」である。

そしてこのニュースを見た。信じられない。おそらく一週間・・いや、一ヶ月くらいは通勤路で出会うだろうと信じてはいる。でないと、僕自身の心もショックを引きずったままだ。

防げた事故だろう。だが、こういう巡り合わせは多々ある。仕方がないとは言いたくはないが、そういうものは後から考えるものだ。駅員が気付いて介助していれば、ホームにいた誰かが側に付いていてくれたら・・そう思うのは誰でも同じだろう。しかし、駅のホームはスマホに夢中な人ばかりだ。誰も他人に意を介さない。ひどい人なら歩きスマホだ・・まあ、大勢いるが。

事故はホームの狭い場所で起きた。確かに危険な場所だが、あの足取りがシッカリした男性が足を踏み外すほど線路に寄るだろうか?その辺の事件性については警察とJRが明らかにしてくれることと期待したい。だが・・まだ確信はないが、彼は戻ってこないのである。こんな悲しみがあるだろうか?昨年、二人の友人を亡くした。この方は他人。でも、そういった悲しみや重さは同じものだと感じる。

 

そして今朝のこと。会社近くの交差点での信号待ちで、白杖を持った女性が一人でいた。誰も声を掛けない、スマホに夢中だ。僕は彼女に近付き、ちょっと遠くから「お手伝いできることはありますか?」と声をかけた。「あ、じゃあ交差点だけお願いします。その後は左に曲がりますから。」との返答が返ってきた。僕は「それじゃ、右腕を取りますからね。」と声を掛けてから腕を引いて交差点を渡った。僕が杖をついている音が聞こえたのだろう、「足が悪いのにすみません。どうもありがとうございました。」と言い、彼女は僕が直進する交差点を左に曲がって歩いていった。

で、思い返すと腹が立つ。彼女の周囲にはたくさんの人がいたのだ。気付かないハズはない。例によってスマホに夢中な連中は別として。どうやって声を掛けて良いのか分からないのかも知れない。それを差し引いても、なんと無情な世界だろうと思う。日本人は思い遣りに欠けるのだなと改めて感じた。

優先席でも妊婦やご年配の方に席を譲らない。僕自身も譲ってはもらえないが、それはもう慣れた。幸い、ペインクリニックに行き始めてから痛みも減っている。怒りは変わらないが、それはもういい。そんな世の中なのだ。