南瓜の馬車 〜いいわけでも許して〜

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【ネタばれあり】もう少し見せ場が欲しかった気も(映画:レッド・ライト)

どうも評価がいまひとつな映画、「レッド・ライト」。ロバート・デ・ニーロ、シガニー・ウィーバー、そして主演にキリアン・マーフィー。なかなか豪華な組み合わせだと思う。個人的にキリアン・マーフィーが大好きで、調べてみるとそれほど多くの映画に出演しているわけではないのだが、サプライズ・ヒットとなった「28日後」や「TIME」、「バットマン ビギンズ」などで見せたあの不思議な青い瞳が印象的な俳優だ。他に似たような俳優がいない、そして演技もその瞳に負けない印象的な演技をすると感じている。

 

さて、「レッド・ライト」だが、俳優陣で選んで、とにかく前知識無しで見てみた。

大学で物理学を教えるマーガレット(シガニー)と助手のトム(キリアン)。彼らは各地で起こる「超常現象」に出向き、その存在を単なる超常現象ではなく、物理的な現象やトリックであることを解明していた。そして、40年ほど過去に超能力者として一斉を風靡し、観客の一人の死亡事故をきっかけに表舞台から降りていたサイモン・シルバー(デ・ニーロ)の復活を知る。マーガレットは過去にシルバーと対決し、植物状態となっている息子をネタに心に大きなキズを負わされていることから、シルバーの調査を進言するトムを頑なに拒んでいた。

しかし、トムはその忠告に耳を貸さず、さらに深みにはまり込んで行く。そして難病に倒れたマーガレットの死を契機に、トムはシルバーにガールフレンドのサリー(エリザベス・オーエン)と共に挑む。果たしてシルバーは「本物」なのか?それとも単なる「ペテン師」なのか?そしてトムに訪れる現実とは? 

うーん、この日本版の予告編、最初の部分が余計な気がするのだが・・。ちなみに英語版はこちら。

まずこの映画、とにかく説明が少ないのと細かいカットが多い。僕はこういう撮り方は好きなのだが、これが苦手な人も多いだろう。全体を通しての物語を追うことが難しく、要点はどこなのか?このカットはどういう意味?という部分が多いと思う。特に思ったよりもエンターテイメント色が少なく、クライマックスでの盛り上がりに欠けると思えてしまうかも知れない。最初に観ていて考えたのは「スリラー?」から始まって、途中で「サスペンス?」に変わって、最後に「やっぱりスリラー」に落ち着いた。 

 

まずは好きな部分。ミスリードを含む謎を含んだ描写と、細かく割ったカットによる緊張感とスピード感がある。見始めるとあっという間にエンディングまで一気に観てしまう。セリフが少なく、そこから「何か」を読み取らなければならない。こうやってアレコレと考えを巡らすのが好きだ。個々のシーンにはちゃんと意味が存在し、よく考えてみれば無駄が無くシンプルだ。分からないシーンに意味を付けることを考えても面白いだろう。例えば、マーガレットの植物状態の息子。彼の存在はマーガレットがシルバーに心に大きなキズを付けるのに充分な役割を果たした。そしてその彼の命は、最後にマーガレットの死と共に一緒に天に送られることになる。また、多くの場面でトムの周囲で起きる奇怪なできごと。電子機器が火花をあげたり、鳥が彼に向かって飛んで来たり。または目をめしいたと思しき老女から唾を吐きかけられる場面では、老女にはトムの秘めたる「チカラ」が悪しきものとして見えていたのではないだろうか?

 

次は、ちょっと・・?と思ったシーン。ベッドに横たわるトムを彼自身が天井から浮かんで自身を見つめるところ。ここが今一つ分からない。自分という存在を客観視した上で憎んでいた結果だろうか。最後のシーンで「ずっと隠していたが限界だ」や「ずっと同じような仲間を探していた」ような表現にも通じるところがある。また、最後のシーンは一度目に観た時には驚愕の瞬間ではあったのだが、二回目に観ると少し地味に見える。もっとハッキリとトムの「チカラ」の存在を示すのも良かったのではないかとも思える。もちろんそれは、逆にこの映画のテイストを崩してしまうような気もするし、色々と考えるとこれはこれで良かったような気もしている。そして、悪人でペテン師であるシルバーの最後の扱い。トムが放ったコインを受け取った時点で彼が盲目であることは嘘だとバレたわけだが、それも少し線が細いというか。もちろん、同時に実験での不正が生徒の手によって暴かれているという事実があるのだが、あの観客のいる場面でもう少しハッキリとさせても良かったのではないかと思える。悪人に恥辱を与えたいという僕の思いだろうか。

 

しかし、この作品の全体的なトーンはやっぱり好きだ。名優が揃っていることもあってか、ともすればB級臭漂うようなテーマでもそんな安っぽさはない。個人的に、主演級の俳優陣も良いが、トビー・ジョーンズのようなアクの強い脇役の存在も大きいと思う。ちょっと笑ってしまったのは、ペテンの超能力を暴く生徒役であり、トムの彼女的な位置付けでエリザベス・オルセンが出ているところ。彼女、アベンジャーズとかだとメチャメチャ超能力使っちゃってて、その落差に苦笑い。最近、彼女の露出が多くなってきた。良い女優だと思う。そうそう、ハリウッド版、「Godzilla」にも出ていたね。

女優と言えば、シガニー・ウィーバー。彼女はあまりにも「エイリアン」のイメージが強くなってしまっているが、実は色々な作品に出ている良い役者だと思う。まあ、大好きな「宇宙人ポール」での悪の首領のような作品にも出てしまうのだが、それはそれで似合っていると思う。(^_^;)