南瓜の馬車 〜いいわけでも許して〜

猫とガジェットと映画と小説の毎日です。

【ネタばれあり】是非、IMAX 3Dで!(映画:スター・トレック BEYOND)

まず最初に書くことがある。もうご存じのこととは思うが、この映画の公開前の2015年2月に「宇宙大作戦」からのスポック役であるレナード・ニモイが亡くなっていること、そして公開直前の2016年6月にチェコフ役のアントン・イェルチンが事故により27歳の若さでこの世を去ってしまったことだ。特にアントン・イェルチンはまだ若いこともあるが、他の作品でも好演をみせており、本シリーズでも実に味のあるチェコフを演じていた。非常に残念である。こういう役者はなかなかいない。

 

さて、映画に戻ろう。

 宇宙の未開拓なエリアに探索の旅を続けるUSSエンタープライズ。ある種族との交流のために訪れた越境の星におき、その有効の印を持って種族との接触を図ったジムだが、交渉は決裂。その後に別の惑星から突然の攻撃を受け、エンタープライズは大破し不時着する。その惑星からの攻撃を行った者の目的は、有効の印に持って行った物だった。そしてそれが、破壊兵器であることを知る。攻撃によって分断されたクルー、そして宇宙空間に浮かぶ生活圏である宇宙基地「ヨークタウン」に危機が訪れる。この難局をどう乗り切るのだろうか?そして、長い宇宙航海で疲れ切ったジムと未来から訪れたもう一人のスポックの死により、船を降りようとする若きスポックの決心。ヨークタウンの機器は守れるのか?そして分断されたクルーの運命は?

この新しいシリーズに共通しているのは、そのスケール感だと思う。昨今のVFXの進歩がこの「見たこともない世界」を作り上げているのは事実なのだが、その映像が妙にシックリとくる不思議。自分自身が慣れたのか、それとも気付かないポイントでVFXの技術が上がったのか?おそらくその両方なのだろうが、ド迫力の映像から目が離せない。正に「釘付け」とはこういうことだろう。特にヨークタウンのスケール感は圧倒的で、本当にそういった構造物があるのだと感じてしまうし、そのアクションの捻り具合が見事だ。もちろん、多少の無理矢理感が無いわけではないが、それが様々な危機的状況での緊迫感に繋がっているのは事実だ。この映画は是非映画館で、それもIMAX 3Dで観るのが良いと感じた。

また、以前はジムとスポックを中心としたストーリー展開だったのが、今回はクルーが分断すること、更に新しいキャラクターを含めることで各自の見せ場が多い。これは旧シリーズでもあったことだが、こういった見せ場の作り方は個人的に好きだ。それぞれが持てる能力(あるいは偶然によるものも含めて)を存分に使って画面を縦横無尽に駆け巡るシーンは映画の「濃さ」みたいなものを感じる。それでいて全体のバランスは崩れてないのが良い。

アクションも、まさか辺境の星でのバイクスタントが見られるとは思わなかったし、新キャラのジェイラーのキレの良い格闘シーンも面白かった。それらを足して、更に宇宙空間、または惑星上やヨークタウンでの映像には気持ちが持ってかれるだけの迫力がある。こういう点でもこの映画は劇場で、できればIMAX 3Dで堪能して欲しいと思う部分だ。

 

逆に、映像やキャラクターのバランスは良くても、全体を俯瞰した場合にストーリー展開がちょっとブツ切れな感じや端折った雰囲気はあるし、微妙に説明不足な点が随所にあることは否めない。この部分がもう少しストーリーの軸として明確な太い線が欲しかったようにも思う。しかし、それも映画館での時間枠を考えれば仕方がない部分でもあるのだろう。この点を考えると、1,2作目の方が映画の総合的な「出来」みたいなものは上だと感じた。

また、カメラの使い方として昨今のアクションでカメラを「揺らす」ことによって迫力を出す手法について以前のエントリーで書いた。何度見てもこれは苦手。やり過ぎると酔うのだけれど、今回はそれに加えてカメラを「回す」シーンが多い。映画に集中していればそんなことはないのだろうが、映画にどっぷりと浸かりこんでいても、この「回す」シーンが来た途端に少々車酔いに似た気持ち悪さを感じてしまう。もちろん、この辺は個人差があるのだろうが、もう少しどうにかならないものか?といつも感じてしまう。

 

僕の年代だと「宇宙大作戦」として馴染みの深い作品でもあるのだが、こうやってクリス・パインが演じるジェームス・T・カークも板についてきたなと思う。正直に言うと、彼の他の作品は今一つパッとしない印象を持っているが、スター・トレックでは馴染みのあるウィリアム・シャトナーのカークとはまた違う、それでいてスポックやドクター(ボーンズ)たちとの掛け合いの面白さがシッカリと残されているのが嬉しいポイントでもある。今回の「BEYOND」ではレナード・ニモイのスポックの遺品として、昔のクルーの写真が出るシーンがある。正直、思いがけないところで唐突に出てきたシーンに、ちょっとウルッときた。あれは亡くなったレナード・ニモイに敬意を表したものだろうか?そんな気がする。当時のドクターのキャラクターが大好きだったし、他のクルーたちにも憧れを持っていたのを思い出す。

そして、こういった「映画館でこそ生きる」映画がやっぱり好きだ。映像も音響も含めて充分に楽しめたのは、今年観た映画の中では一番だったと思う。

 

次回作があるのかどうかは色々と噂が出ているところだが、できれば同じスタッフでもう少し続けて欲しい・・アントンは既にいないのだが・・そう思える作品であると思う。