南瓜の馬車 〜いいわけでも許して〜

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究極の自己犠牲(映画:デッド・ゾーン)

今日はちょっと昔の映画を紹介したい。割と好きな映画。

以前に「そんなに有名じゃないけど、個人的にお勧めしたいSF映画6選」で紹介し忘れた映画と思った作品である。

blog.rei1963.net

というか、以前の時にもアップしてから気が付いたんだけど、「SF」って科学的空想の物語ってことで、そういう意味では違うのもあったよね。これもどちらかと言うと「サスペンス映画」だね。大変失礼いたしました。

「デッド・ゾーン」は原作がスティーブン・キング、1983年のデヴィッド・クローネンバーグ監督作品である。かなり古い。なにせ、僕が20歳の頃の映画である。劇場で観たわけではなく、テレビで観て衝撃を受けた。

その後何年かして、時折思い出しつつ、どうも気になってネットで探してみたが新品が無い。中古も高値高騰していたのでなかなか買えず、再販も何度かされているようだが、僕が我慢できずに買ったのが数年前の中古品だ。今では新品も品薄でやっぱり高騰状態だが、一応買うことはできる。 

 

高校教師であったジョニー(クリストファー・ウォーケン)は、ある日交通事故に遭い、5年間の昏睡状態にあった。奇跡的に目ざめた彼に待ち受けていた現実は、事故の後遺症である足のギプスとそれによる辛いリハビリ、たまに訪れる激しい偏頭痛、そして彼のフィアンセであるサラが既に結婚していたことであった。

事故から回復したジョニーには不思議な能力が宿っていたことが徐々に分かってくる。それは他人の現在や過去、未来を透視する能力だった。そのため最初はそのチカラをもてはやされていたが、徐々にそのチカラを怖れる人たちから忌諱され、世間から遠ざかっていく。そして彼は偶然、地元の政治家、グレッグ・スティルソン(マーティン・シーン)の未来の行動を見てしまう。それは彼が将来起こす、人類の存亡にも関わる出来事だった。ジョニーはどうするのか?

 内容的には超常現象を扱ったサスペンス映画である。よくあるスティーブン・キングの作品は「キャリー」と「シャイニング」で爆発した感はあるが、この作品はそれよりも少し後の作品である。スティーブン・キング自身はこの映画を高評価し、監督のデヴィッド・クローネンバーグもこの映画で高い評価を得、次作への足がかりを掴むことになった映画でもある。だが、世界で高評価であったこの映画は、日本ではほとんど評価されず、日の目を見ることが無かったのである。だから知らない人も多々いると思っているのだが、Amazonで価格が高騰しているところを見ると、希少価値のあるレアな作品でもあるのだろう。まあ、こういった消費者の足元を見るような価格設定は嫌いだが。

ちなみに僕が買ったのは値段が高騰している時で、「デラックス版」を買った。これには監督やマーチン・シーンのインタビューが収録されている。レンタルもあるので、気になる方はレンタルで観ても良いかも。Amazonビデオにもレンタル(有償)があるが、こちらはSD画質なのであまりおすすめしない。

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超常現象好き、またはスティーブン・キング好きなら観る価値は充分にあるだろう。

物語は全体的に暗いトーンで、クライマックスでこれを悲劇と取るか、主人公が苦難を乗り越えた成功と見るかでこの映画の価値は変わるのではないだろうか。もちろん僕は後者だ。彼には既に何も残されていなかったのだから。究極の自己犠牲である。彼は愛した女性を救い、そして世界をも救った充足感を勝ち取ったのだ。

 

今となっては似たような類いの映画は多々ある。ただ、この全体に暗いトーンで淡々と描かれるシーン、そして徐々に緊迫してくる主人公の行動の、シンプル且つ緊迫感溢れる姿がよく描かれていると思う。おすすめの作品である。是非再販(Blu-rayが良いかな?)して欲しいなとも思う。