南瓜の馬車 〜いいわけでも許して〜

猫とガジェットと映画と小説の毎日です。

介護における現実と諸問題と解決作について考えてみる

 なんとなくイマイチな埼玉の天気。心をスカッとさせるような話題が欲しいところだ。まあ、現実はなかなかそうもいかないので、家人と共にウチの猫達に癒やされることが今はとても幸せを感じる。

 

んで、今日はこんな話題を。

business.nikkeibp.co.jp

これは昨日のニュースである。要約すると下記だろうか。

  • 「1億総活躍社会」における「介護離職率ゼロ」を目指す
  • 主要な予算は所謂「箱物整備」を重点としている
  • 介護職の人材確保のための育成とキャリアパスのための評価制度

まず、「不評」であるのはどこか?ということをもっと掘り下げねばならないだろう。この内容だけでは根本にあるものが何か?に突き当たらない。

 

誰でもまず考えるのは「本当に介護離職率が高いのか?」である。

careerlove.jp

このサイトを読んで行くと、単に「離職率」で表現しては間違った方向に進むことを示唆している。要は、正規/非正規の割合によるところが離職率を相対的に高く見せていることが一因にある。それと共に離職率と就業契機との乖離もあるだろう。ここを繋ぐ線は端的ではあるが、やはり「労働にみあった報酬」にあると僕は考える。

また、その離職理由を厚生労働省を含む他のデータ(上記のサイトは厚生労働省のデータが元になっている)を眺めてみても、離職率については主な差異は正規か非正規かによる。これは他の業種でも同様のことが言えるだろう。つまり、離職率が高いのは非正規社員が多いことから「そう見える」と考えられる。

 

ではそもそも非正規社員が多いのは何故だろうか?今度は以下のサイトだ。

www.nissay.co.jp

ここから見えるのは産業構造によるものだと思う。「儲けが少ないのなら、賃金を下げる」「利用者の数が安定していないのだから非正規社員によって変動を補う」ということだ。そもそも介護報酬は介護保険と税金でまかなっているわけである。ちなみに、障がい者の場合には障害者支援法による税金でまかなっているのだが、これは将来統合される動きがある。これは業務の内容と老齢が進むことによって要介護者が障がい者と同様の支援が必要であることから類推できる。この辺は具体的な報道発表や論文を提示できないが(僕自身、調べてみてもデータが古い、制度の変動などによって確証が持てない)、「介護支援」「障がい者支援」「統合」辺りで検索すると色々な情報があるので、興味がある方は調べてみて欲しい。

参考までに、総務省の正規雇用に関するデータも貼っておこう。

雇用者

http://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/nen/dt/pdf/ndtindex.pdf

 

介護報酬については少し古いが下記のサイトを紹介しよう。介護報酬に対する考え方の参考になると思う。

www.minnanokaigo.com

また日本には特徴的な問題として、急激な高齢化も一つの要因である。内閣府が行った調査の結果があるのでこちらも参考になると思う。

高齢化の国際的動向

http://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2014/zenbun/s1_1_5.html

http://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2014/zenbun/img/z1_1_13.gif

 

 

さて、どうして僕がこういうことに興味を持つのか?

それは、家人がこの手の職業に就いており、実体験を良く聞かされる。今は介護ではなく障がい者支援施設に行っているのだが、そもそもは介護系の資格をいくつか持ち、その過程においても実体験を重ねている。

そこで家人を見ていて思うのは、やはり問題なのは労働に見合う報酬、つまり対価である。では、対価はどう決められるのか?それが今回の箱物の確保と共に打ち出されたキャリアパス制度なのだろう。だが、それだけでは改善は難しいだろう。

 

まずは報酬に対して必要なのは原資だ。例えば一般の企業であれば、多くは自社製品や技術を販売することによって得た利益を社員に還元する。その分配率を変えることによって社員のモチベーションの維持、社会的立場としての役職に繋がると同時に報酬に格差を付ける。それを循環させることによって企業はなりたっている。

では介護はどうだろうか?介護は基本的にその原資を介護保険と税金でまかなう。この辺は今後の変化が早く、しかも大きいところなので現時点ではハッキリと表せない部分でもあるが、この原資をどうするか?が焦点になるだろう。

  • 保険料の増額
  • 増税率のアップ
  • 他の原資の獲得

などが筆頭だろう。これらを解決するために考えられるのはとにかく「経済改革による原資の増大」。つまり停滞した経済を救済することが最も大切なのが分かる。見かけ上で介護従事者の処遇を良く見せたところで、原資となる経済が停滞していたのではその原資を確保できない。それは離職要因の分布を見ても明らかだろう。

 

更に日本には上記で挙げたような固有の問題もある。

  • 少子高齢化社会の到来
  • それによる人口の減少
  • 介護認定制度の見直しによる数値的な要介護者の増加

少子高齢化については言うまでもない。総務省の人口統計を見れば一目瞭然だ。

人口推計(平成25年10月1日現在)
‐全国:年齢(各歳),男女別人口 ・ 都道府県:年齢(5歳階級),男女別人口‐

http://www.stat.go.jp/data/jinsui/2013np/

 http://www.stat.go.jp/data/jinsui/2013np/img/05k25-p.gif

これからは別のことも見て取れる。実は最初の方のサイトにも一部書いてあるのだが、せっかく確保した人材も、要介護者が2025年をピークに逆に減っていくことを考えれば、安定的な正規社員の雇用に躊躇する事業者もいるだろう。

 

つまりこれらを合わせて考えれば、他の方策も考えていかなければ「日本の未来は暗い」としか言えないと思う。

 

ここまで書いておいて「打つ手はありません」と書くのもナンなので、一つの例として以下のサイトを紹介しておく。

 

総務省、Z-works,ケイエスピーの「がんばらない介護」を実現するIoT支援ツールの開発に補助金の交付決定

https://iotnews.jp/archives/12028https://iotnews.jp/archives/12028

これは時代背景にもマッチしているだろう。成長著しいIoT分野を介護に生かしていくということだ。

僕はこの手の仕事をしていく中で「身体障害児支援に関するITの仕組み造り」として会社の中で声を発したことがある。その時の周囲の反応は良くなかった。ハッキリと興味を示さないもの、そもそもカネにならないことをやる意義があるのか?という意見(これは残念なことに、職責の高い人の方が顕著だ) しか得ることができなかった。非常に残念なことである。

 

またこういうこともある。

www.mhlw.go.jp

サイト内にもあるが「高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援の目的のもとで、可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう、地域の包括的な支援・サービス提供体制(地域包括ケアシステム)の構築を推進」ということだ。だが、これは現実的なサービス提供側と利用者側の齟齬があり、要介護の認定の現状や、むしろ国が地域に丸投げしているのが現実らしい。この辺はまだまだ成長を期待したいところだ。その方式や制度も含めてまだまだ熟成が必要だろう。

 

ただ、こういった動きを今後後押しすると共に、シュリンクした経済の立て直しや別の方策が生み出されることを期待したい。でなければ「人間」をやっていることすら「馬鹿馬鹿しいこと」と思えてしまうからだ。世の中は個々の人間の声を出し、それを拾う人たちがいてこそ「より良き社会」への道筋ができるものだと信じたい。

 

余談だが、家人が言っていたことで興味深いことをひとつ。

今の70代から上の年齢の方達は、こういった福祉を受ける側として「他人に迷惑をかけることは避けたい」と考えるようだ。逆にそれ以下になると「払ったものを是が非でも取り戻したい」となる。正直なところ、どちらが正しいとか良いとか悪いとか言えないと思う。ただ、印象的だし、これはしっかり考えるべきことと思うので付け加えておきたい。この背景には、戦後の高度経済成長期における影響もあるのだと思う。モノが無かった時代である。ある意味必然であるし、自らのことしか考えない世代であっても仕方がないのかも知れない。ただ、であるのなら、「今の社会は俺たちが作った」という意見は、今の現状をも招いたということを自覚して欲しいと思う。

若者にも色々と問題はある。だが、年配の人たちにも歴史を含め、問題が無いとは思っていない。もちろん自分も含めて。

 

最後に、まだまだ調べたいことがあるので、思いついたこと、分かったことは順次訂正なり追記なりしていくつもりである。