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南瓜の馬車 〜いいわけでも許して〜

日常生活で思うこと、電子ガジェット、オーディオ、映画、小説を紹介するサイトです。

映画:マイ・インターン

映画

 なんとなくタイトルに色々と付け加えるべきじゃないなと感じたのでシンプルなタイトルにした。最近は時間があるせいもあって、よく映画を観ている。昨日は「リトル・ダンサー」と「ヒューゴの不思議な発明」を。共に素晴らしい映画である。「ヒューゴの不思議な発明」は、そのジャケットと日本での売り方のせい?で子供向けのファンタジーだと思えてしまうが、この2作は少年や大人の夢と家族のありようであり、後者はそれにSFの父、ジョルジョ・メリエスへのオマージュでもある。こういう心温かき映画は大好物だ。

 

さて、以前から欲しかった「マイ・インターン」のBlu-Ray。家人が買ってきたので観てみた。

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以前にも「ドンパチも好きだけど、穏やかな心になる映画も、心が揺さぶられるような映画ももちろん好き。」みたいに書いた。そんな中でこの映画は「穏やかな心になる」映画じゃないかな。

 

ストーリーは、僅かな期間で起業し会社の規模を拡大してきた若き女性社長が抱えた多くの問題と、定年退職した老紳士が再び社会参加をしたいとインターンとして一緒に働き出した・・端的に言えばそのくらいのシンプルなストーリーだと思う。

 

第一の感想としては、まずはこの手の会社や人間関係は日本人には理解しづらいだろうなと思うこと。僕自身も思うことだけれど、現実味を感じられない。それは悪いという意味ではなく、日本の社会はそういう育ち方をしていないから。若くして成功した女性企業家、年老いたインターンの採用、オープン過ぎる会社、フランク過ぎる個々の関係、夫と妻との関係、どれをとっても日本ではお目にかかれない。もう一度書くが、それはどちらが良いとか悪いとかではないが。

 

ただ、こういう職場には憧れる。社長であるアン・ハサウェイ演じるジュールズの周辺以外はフラットな会社。日本だと狭い場所で部長だか課長だか係長だか分からないが、そういう責任単位をそれ以外の場面でも強く押し付けられる。きっと外国人からみたら凄く気持ち悪いことだろう。まあ、それでも「それが日本の会社」だと言われれば「あぁ、そうか。」と思うだけだが、僕はあまり好きじゃない。人の尊敬は役職に与えられるのではなく、人格に与えられるものだと思っているのであって、日本の企業の場合はそれが伴っていないことがとても多いと思うからだが。

 

映画全体を見渡すとどうだろう?

好きな映画であると思う。監督が女性だからか、視点が女性目線であることは否めないのだが、それでも人生の時間を正しく(というと語弊があるかもだけど)過ごしてきたらこういう「紳士」になる・・と考えると、畏敬に似た憧れを感じる。自分もこんな感じに歳を重ねたいし、そういう人と友人になりたいと思う。

主人公はアン・ハサウェイとロバート・デ・ニーロであることは間違いないが、その周辺に小ワザの効いた人たちがちりばめられている。それを無理なく受け入れられるのはロバート・デ・ニーロ演じるベンの人格というか人柄だろう。あぁ、良いなぁ・・こういうの。みんなの生き生きとした姿が羨ましい。

 

映画として細かい時間的、環境的、唐突感を無理とか齟齬とかはこの際、無粋だろう。2時間ほどで見せたいものを見せるのが映画であるし、今回は重要な視点はそこには無いと感じるからケチを付けるものじゃないと思う。むしろシンプルなのが人間関係の分かりやすさに繋がっていると感じた。

 

他にも良いなと思ったのは、建物、衣装、街並みの穏やかな美しさ。この後にベランダに出て近所を眺めただけで落胆するくらい憧れる。美しくデザインされたオフィス、外に出れば道路に覆い被さり、人々を守るように枝葉を伸ばした木々、道路脇に置かれたデザインされたクルマたち、住む人の人格を映し出す家の中の様子。それらが自分の手の届かないところにある現実は悲しいことだが、一枚の「絵画」として捉えた時の美しさがある。これもその社会全体を表しているのだろう。

 

ロバート・デ・ニーロは名優であるが、ちょっとオーバーな笑顔が作り笑いっぽくて、そこが微妙に難点かなとは思ったけれど、こういう良い人生として年齢を重ねることによって生まれる「紳士の余裕」はよく出ていると思った。細かな表情や所作だけでもデニーロは圧倒的な存在感がある。身近な一言にもその背景には長くて厚みのある人生が積み上がっているものである。残念なことは、それを理解できるようになるには、ある程度同じような経験をしてこないと無理なのかもなと思えること。ベンはその人生の厚みを僅かな一挙一動で魅せる。だから周りに信頼され、慕われる。あまりに理想的過ぎて、逆に信憑性を疑いたくなるのは分かるが、これが若者や子供に対する一つの「大人の見本」であることは間違い無い。

 

久し振りに心温まる映画であり、そういう映画がまたひとつ増えた。休日の午後の一息に浸って観る・・そんな映画だと思う。