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南瓜の馬車 〜いいわけでも許して〜

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暖かき家族の絆、映画「河童」(ネタバレあり)

映画

今日は2月にしては本当に暖かい一日で。外出しようかなぁ・・と思いつつもここのところ外出続きでヘバっていたので家で大人しく映画鑑賞の一日。先日買ったフロントスピーカーも既に100時間を超え、微妙な繋がりの悪さみたいな荒れた感じは無くなってきた。まあ、最初から良い音だとは思っているけれど。そうそう、やっとブログが独自ドメインで動きだしました。 http://blog.rei1963.net です。旧ドメインでもアクセスできますが。

 

さて、今日はちょっと古い邦画で「河童」を観たくなり、随分久し振りに観てみた。この作品、1994年の作品で、米米CLUBの石井竜也初監督作品として話題になった映画である。2007にリマスタリングされ、DVD化されている。何故か2種類のパッケージが存在するのだが、収録映像時間が違う。僕の持っているのは長い方だが、明確な違いは分からないままだ。

また、当時まだ30代中盤の米米CLUBの石井達也氏が監督ということで、どうもイロモノ的な感じを受けたのだけれど、映画そのものは実に真面目に作ってあり、数少ない好きな邦画のひとつである。

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おおよそのストーリーは、昭和28年を舞台としている。閉鎖的な田舎に都会から戻ってきて村の巡査をしている主人公の父親(陣内孝則氏)と、その中でイジメにあった少年とその村に昔からの言い伝えである「河童(実は宇宙からの来訪者)」を主軸とした物語である。

家人曰く、そのタイトルと石井達也氏監督ということで、デキの悪い妖怪映画だと思っていたらしいのだが、今回初めて観て涙するほど感動していた。

 

映画は現代の父と子の確執から始まる。10年以上、たった一人の家族である息子を省みず戦場カメラマンとして過ごした父との最悪な再会。それは父の戦場カメラマンとしての個展のオープニング、そしてその個展で倒れる父。そして病床の父が無理を推して故郷に戻る。子供の頃の家族との思い出と河童との約束を心にして。

 

まずこの映画を見始めて間もなく過去のシーンに移る。そこに映る田舎の映像はどこか郷愁を思わせる懐かしい場所だ。僕が昭和38年生まれ。それよりも10年前だし、地域的なものもあって微妙に僕の過ごした少年自体とはズレがあるのだが、それでも田畑の広がる自然の風景はイヤでも子供の頃の懐かしさを喚起させる。何と言うか・・心がホッとする映像なのだ。これが初監督作品とは思えないほどの描写の巧さだと感じた。

 

この村には昔から「河童」の伝説がある。そのおかげで水は涸れることがなく、村は栄え、村人達は神として河童をあがめていた。

ところが時代の流れとともに継承されてきた言い伝えの意味は薄れ、いくつかの誤解により河童は悪者にされてしまう。もはや神でなく、単なる野獣と同じ扱いなのだろう。

そこに都会からの出戻りの巡査と、主人公の子供時代である息子。彼等は昔からどこにでもあるような閉鎖的な村人達の格好のイジメの的になっている。

 

そして河童は偶発的な事故により、心ない村人・・とまでは言わないが排他的で閉鎖的な村人達の誤解によって命を奪われようとしていた。老人達が守る昔からの言い伝えも守らず、血気盛んで、扇動者による集団心理に突き動かされている村人の姿は現代社会でも変わらないとも言えるものだ。しかし、その河童の住む場所にはちょうど、好奇心旺盛な村人の子供達もいたのだった。

河童のいる祠は爆破され、子供達の命は危機に晒される。そんな中、今まで村人の嘲笑とイジメの的であった巡査が、自分の息子を含む他の子供達の命を救うために犠牲になる。涙なくしては見られないシーンだ。そして息子は河童と「必ず戻ってくるから」と約束するのであった。

 

そして40年。戦場カメラマンとなり、余命僅かとなった彼が故郷に戻った時、既にそこは時の流れに押し流されようとしている場所と化していた。そこで彼は、険悪であった息子と共に河童との約束を果たそうとするのであった・・。この後は書かなくても良いだろう。是非、映画を観て欲しい。

 

物語のテーマのひとつは「家族の絆」だろう。古い慣習の中にあって都会から出戻りの親子が村に馴染めない。それは人間とは別の生物である河童の親子も同様であろう。偶然出会った人間と河童(何度も書くが宇宙人)の子供達の絆は、同じように母親を亡くした境遇であったこともあり子供らしい絆を深めていく。この河童のデザインが石井監督だと知って更に驚いた。

そして父親と息子の絆、祖父とのやりとりに、他者がどんなであろうと切れることのない暖かさがある。特に祖父役の今福将雄氏の老人役はなんとも言えない穏やかな味がある。そう言えば、僕も父方の祖母と同じようなやりとりをしていたことを思い出し、涙腺が緩む。

 

僕はシロウトだが、シーン割りの巧さ、映像の美しさ、SFとしての要素、そして俳優陣の雰囲気に飲まれる。シンプルな構造だが、そこにこの映画がどの年代にでも楽しめるエンターテインメント映画である要因になっていると感じる。初監督作品とは思えない映画だ。

そして映画全体を流れる落ち着いた音楽が、映画の世界にどっぷりと引き込んでくれる。最後の石井竜也氏の「手紙」は、まさにこの映画にピッタリの雰囲気を持っている。

 

個人的にだけれど、特典映像にメイキングがあるがそれを是非見て欲しい。石井竜也氏がいかにこの作品に真摯に挑んだのかがよく分かる。

 

映画の中の自然の姿を見ていると、やはり人間はそういう場所が必要なのだろうな・・と感じる。心が休まるようなそういう場所。そしてそこには暖かい「家族の絆」があるのだ。この映画を観るひととき、世間の世知辛さと喧噪を忘れ、暖かい気分に浸ってみる。そんな映画である。