南瓜の馬車 〜いいわけでも許して〜

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ハイレゾ対応イヤホン?は?なにそれ?

最初に書くけれど、何を書きたいかと言うとやたらと「ハイレゾ」と付けて機器やソースを高騰化させているビジネスモデルに腹が立つからである。ある音響機器メーカーのオッサンが言っていた「やっと出てきたキーワードなんです!やっと訪れた商機なんです!」。これが今の状況を作り出している。僕の知人が「このイヤホン、ハイレゾ対応って書いてないから使えない」なんて言ってきたのは何回目だろうか。それについて解説したい。ついでに言えば、バランス接続とかも同じ気持ち。仕組みとして良い音に貢献できているのは分かるが、音はそもそも「好み」だし、もっと自分の耳を信じて好みのものを選んで欲しい。

ハイレゾとは

今まで書かなかったが、僕は「電話屋」である。アナログ交換機の時代からデジタル交換機の時代変遷を仕事として見てきている。そもそもデジタルとは何か?それは理解しているつもりである。当時のPCM24方式から今の量子化された64bitが人の声を判別するのに充分だと言われ、技術が進み、実際には伝送路や諸処の問題からデータは更に圧縮され、8bitを非直線量子化することでデータ量の低減を果たしていたりする。

他にも圧縮から伸張される段階で失ったデータを補完する技術もある。例えば、ハイレゾを理解するのに、まずは何をしているかを知ることから始まる。下記サイトの最初の部分が参考になると思う。(自分で図を書かなくてすみません。後で書いて追記/編集します)

Illustrator基礎講座-デジタル

 

要は、乱暴に言うと

CD規格では、音の周波数に対し音のサンプリング回数(標本化)が1秒間に44,100回、それを65,536段階(16bit)の段階で表し、滑らかにして(量子化。この時のアナログ信号との誤差が量子化ノイズ)、そのデータを時間経過に沿って2進数で書き出す(符号化)ことがデジタル化である。ハイレゾは、そのCD規格を上回るサンプリング周波数、量子化の段階を使ってアナログからデジタルに変換された音楽ソースである。つまり、より元のアナログ波形に近付き、デジタル的な音から遠ざかることになる。

のがデジタル化であり、ハイレゾである。

ハイレゾとは、そのサンプリング回数をもっと多くし、音の段階をもっと増やして記録したデジタル信号を差している。もちろんデジタル化した音は元のアナログの音に近付き、それ自体は音質が「良くなる」と言っても差し支えないだろう。

ちなみに、ハイレゾの定義についてもう少し下の方にリンクがあるのでそれを参考にしてもらいたい。

それからついでに。よく同じイヤホンを使っているのに「高音が凄く出るようになった」と耳にするが、それはある意味錯覚に近い。むしろデジタルっぽい「シャリシャリ感」はノイズや歪みであり、低ビットレートの方が多い。

ついでだからDSDも

ついでに、昨今よく聴かれるようになったDSDにも触れておく。そもそも今までの説明とは方式が違う。DSDはサンプリング周波数を非常に高い周波数で行うこと(2.3MHzとか5.6MHzとか)、そしてそれを1bit処理するわけである。データ量が多いのはそういう意味である。

それによってデジタル化された音は膨大?なデータ量によって、より元のアナログ音源に近い音にすることができる。

www.phileweb.com

ただ正直なところ、どうしてあんなにDSD音源は高いのだろう。もちろん現在はニッチであることも関係してくるかと思うが、音楽配信プラットフォームが出来上がっていれば、DSDソースの配信はもっと低廉化できるのでないだろうか。だからニッチなんだと思う。もっと大勢の人に音楽を楽しんでもらうためにも、更なる価格の低廉化に対する努力をして欲しい。イチ消費者として。

人間の聴覚とハイレゾ

では本題に戻ろう。

まず先に、人間の聴覚において通常は20〜20KHzが可聴領域であることを忘れてはいけない。一部、例外的にそれ以上、それ以下の周波数帯の音を聴くことができる人がいるが、それはごくごく一部の人だ。最近は様々なアプリで自分の可聴領域を調べてみることができるので試してみると良い。例えば僕が計ってみると、14Khzはほぼきこえない。まあ、もう50代もとっくに過ぎているのだから仕方がないところだろう。

age of Ears(耳年齢)
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確かにサンプリングレートを上げ、量子化ノイズが減って符号化のレートがあがれば、より、元のアナログ音源に近くなる。これはまあ、良い。問題は、本当にそこまで必要なのかということである。確かに、CDよりもハイレゾの方が音質は良い。だが、それは音楽を聴く機材とその時の環境にもよる。家でジックリ聴くのか、電車の中で聴くかにもよって違うだろう。更に言えば、よりアナログ音源に近い音質よりも、CDの音質の方が好きだって人だっている。それはアナログの滑らかさよりもエッジの効いたCDの音の方が曲によっては刺激的に聞こえるからだ。
例えば以下のサイトで聞き分けをやっている。このくらいの機材を使ってさえ、こんなものなのだ。

ハイレゾ対応イヤホンと楽器や声の周波数 

ここで最初に戻る。

では、「ハイレゾ対応イヤホン」とは何だろうか?多くの人が「高域が伸びて素晴らしい」と言っているのも見るが、これは的が外れているし、踊らされている。恣意的に高域に振ったイヤホンを「ハイレゾ」と謳っている商品もあるのではないかと訝しむ気持ちもある。そもそも20KHz以上なんて可聴領域外だし、楽器や人間の声のことを考えてみて欲しい。

genxbeats.com

もちろん、可聴領域外の音が、音質全体に影響がまったく無いとは思っていない。20Hz以下の音が聞こえなくても振動などで「感じる」ことや、20KHzを超える音が音楽そのものに影響を与えるとは思う。そもそも自然界には風の流れるような低周波から犬笛や何らかの振動音のように聞こえない周波数の音も存在している。ただ、それとイヤホンを同列に考えるのは乱暴だと言うものだ。

 

本音を言うと、細かい技術とかどうでもいい。じゃぁ、「ハイレゾ対応」じゃないイヤホンがハイレゾを生かし切れないと言えるのか?

いや、そんなことはない。そもそもハイレゾと書いてなくても、素性の良いドライバのイヤホンは一部の粗悪な商品を除けばハイレゾと言われるソースを鳴らすだけの充分な性能を既に持っている。むしろ、そのイヤホンの音が好みなのかそうで無いのかの方がかなり大きい要素といえる。

こちらの例えも乱暴だけれど、カスタムIEM辺りの何十万円もする超高額なイヤホンに「ハイレゾ対応」なんて書いてあるだろうか?それは「ハイレゾロゴ」を取得してないだけで、充分な性能を持っている。単にロゴの問題だ。

気持ち悪いのは、販売店の店員が「これはハイレゾ対応じゃありませんから」とか平気で言って、より高額な商品を買わせようとしていると思えることだ。事実、友人もそう言われてイヤホンを買い替えた。どうやら音自体は好みらしいので良かったのだが。

久し振りの商機に沸き立つ気持ちは分かるが・・

確かに久し振りに訪れた商機に市場が沸き立つ気持ちは、ビジネスマンとして分からないわけじゃない。ただ、消費者の無知につけ込んで必要のない高額な商品を売りつける商法が気に入らないだけだ。よく「20〜20KHz対応」と書いてある商品があるが、それはまだハイレゾの無い時代か、あるいは可聴領域に応じた一種のラベルであり、実際にそれ以上出ないなんてことはほとんどない。

消費者の方に願いたいのは、自分の耳を信じて欲しいこと。とにかく試聴してみて、自分が「好き」だと思える商品を買って欲しい。「詐欺」とまでは言わないが、こういう商売は見ていて腹が立つ。ハイレゾと書いてなくたって、ハイレゾ音源を良い音で鳴らすイヤホンはいくらでもあるのだから。

蛇足だけど許して

この間、レコードをデジタル化するために、おそらく・・30年ぶりくらいにレコードプレーヤーを買った。それも1万円くらいのPioneerの安物。でも、実際に音楽をかけてみると、ハッキリ言って「スッゲー!」と驚いた。あぁ、やっぱりレコードの音は良かったんだなと再認識した次第である。

もちろん取り扱いが面倒だし、既に市場に流れているのも数は少ないし欲しいものは中古ばかりだし。でもこういう楽しみ方もあるよなぁ・・と思う今日この頃であったりする。

 

追記

標本化、量子化、符号化のところで、読み直すと妙ちくりんなことを書いていたので直しました。バカだね、俺。