南瓜の馬車 〜いいわけでも許して〜

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試聴用のリファレンス曲について語ってみる

先日の休日にONKYOの新しいカスタムIEMを試聴しようと思って八重洲に行ったら、平日しかやってないということを知って唖然としたバカモノはワタシです。もっとちゃんと調べておくべきだった。(´Д` )

ちなみに、仕方がないのでCyain N5を聴きに行っても自分の趣味に合わず、さらについでにいくつかのカスタムIEMを再々々・・試聴をしたらフラットな音に慣らされた耳はどれにも満足できず。ギラギラしてるみたいに感じちゃう。ある意味不幸。

 
さて、オーディオ好き、特にポータブルオーディオ好きな人は試聴の際にリファレンスとなる曲をいくつか決めていると思う。僕もそのひとりなのだが、何をもってリファレンスとするか?と考えれば、「自分の好みの音を探る」ためであると思う。そのために使ってる曲をちょっと紹介してみようかと思う。
 
まず、自分がよく聴くジャンルは何か?
ここから始まると思う。僕は洋楽として80年代前半のポップス、そしてここ2〜3年のポップス、ロック、オルタネイティブ、EDM辺りがメイン。これが全体の7割を占めている。
それに加えて邦楽はほとんど70年代後半から80年代前半の曲。要は「青春時代の音楽」である。これに多少の最近の曲、たとえば先日紹介した「Charisma.com」や「K」がある。あぁ、もう一つ。ずっと聞き続けている「久保田利伸」があるね。基本的にはそれに散発的にヒットした曲がちょっとだけ入っている。これが2割くらい。残りの1割がクラシックやイージーリスニングになるのだけれど、クラシックは凄く偏っていて、小学校の頃に演奏したり聴いたりしていた曲だけだ。あまり幅広くない。
 
次に、どんな音質が好きか?
これも前のエントリーにも散々書いているがフラットな特性が基本で、高域がちょっと伸びているくらいの音で、ヌケの良い雰囲気が良いんだけど、密閉型がポータブルの基本と考えると周波数特性で言えば中域が少し控え目で4〜8KHz辺りが少し盛り上がっていると「ヌケが良い」と感じるような気がする。これは同時に音場の広さにも貢献していると思う。
ただ、中域を下げるとどうしてもボーカルが弱くなることになるので、この辺がちょっと微妙なセッティングなのかなとも思うところ。もちろんこれらはイヤホン/ヘッドホンの特性だけではなく、再生機の出力インピーダンス特性などにも左右するから、どの機器で再生してどのイヤホンを選ぶかって話になるんだと思う。
後は楽器の音がしっかりとその楽器本来の音として分離して聞こえるか?というところも重要かな。
 
逆に苦手なのがちょっと前までやたら多かった「低域強調型」。高域があまりにシャリついても同じことが言えるが、低域がドカドカと鳴っていると疲れると言うか長く聴いていると頭が痛くなってくる。後はやたらとパワーのある音。うまく表現できないんだけど、個人的な感覚として音数が多く、それが中心に集まって更に濃い低域が加わるとそう感じる気がする。この辺は「好み」だということは分かっているんだけど、そういう機種を絶賛する人が割と多い気がする。特にカスタムIEMだと多ドラの多くがそうで、僕が多ドラが苦手なのはそういう理由だ。何というか・・膨らんだハリセンボンとかトゲトゲのウニとかを連想するんだよね。どれもパリパリしていてボーカルが造られた電子音(まあ、そもそも電子音なんだが)のような変なエフェクトがかかったような音。これが苦手。
結果的にBAなら3〜4ドライバのものか、むしろダイナミックドライバの方が好きだったりもする。ただ、ドライバの性質上、カスタムIEMには適さないとは思うのだが。
 
あとはどの機器で聴くか?
だが、これはもう先に決まっている筈だよね。
 
さて、前置きが長くなった。上記のことを踏まえた上で、普段から聴き慣れている曲の方が違いが分かるという理由から最近は以下の曲をリファレンスに使っている。
 
K / 大切な人(ライブバージョン)
 
動画が無いがご容赦。この曲はライブのホール感が良く出ているのかどうか、観客の反応の広がりで音場が分かりやすい。弾き語りのピアノの音が良く分かるし、加えてKの歌声の伸びやかさと自然さが表現できているかを聴いている。何と言うか、「ちゃんとした人間の声」みたいなイメージ。
 
Charisma.com / 超絶に胸が痛んでるあなたの上司

 
出たばかりの曲なんだけれど、「超絶に胸が痛んでるあなたの上司」のPVが無かったので「お局ロック」を貼ってみた。最近の曲らしく、コンプレッサーで歪むような音源。この中でラップのボーカルがしっかりと埋もれず、滲まず、刺さらず聴けるかと言うことと、単純にこの曲が好きで頻繁に聴いているというのも理由。気持ち良く聴けるかどうかだね。
 
Hall & Oates / Private Eyes

 
1982年の曲で、僕が洋楽に目覚めた曲。おそらく回数だけだったら一番聴いているだろうし、ベスト版も含めて複数のソースも聴いているので些細な違いも良く分かる。ソースの古さはいかんともし難いのだけれども、これは音の篭もり具合と全体のバランス、途中で入るクラップの音質を聴いている。
 
Michael Jackson / Thriller

 
動画には無いけれど、シングルバージョンにはあるイントロで左のドアが開き、右側から靴音が近付いてくるところのリアリティを聴いている。曲自体は派手な色づけを感じるのであまり参考にならないと思ってる。
 
David Guetta / Turn Me On

 
EDM全盛の頃に散々聴いたというのが理由だが、全体的なノリの良さが表現できるか、シンバルやシンセの音が破綻しないか、低域が潰れたりしていないかをチェック。
 
The Weekend / Earned It

 
割と最近の曲だけれど、何というか・・壮大なステージ感みたいなものが伝わってくるかどうか、ボーカルの切なさが表現されているかどうかがポイント。これ、イヤホンによって結構差が出るなと感じたので入れてある。
 
Amna / She Bangs

 
よく聴いていると低域の楽器の音がたくさんあって、混ざったりしていないか、緩さを感じないか、量的に多すぎないか、Amnaの特徴的なボーカルが瑞々しく聞こえるかをチェック。特に、低域が潰れないかを重点的に聴いている。このアルバム、とても良いと思うんだが売れていないらしいのが残念。
 
VIVALDI / For Seasons Love(ハイレゾ)
 
手持ちのハイレゾの中で一番違いが分かりやすいと感じたので。各楽器が明瞭に、分離良く聞こえているか、濁ったり高域が破綻しないかなどチェック。
 
小澤征爾指揮 / 喜歌劇(こうもり)序曲(ウィーン・フィル ニューイヤーコンサート2002
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単純に好きで、一番たくさん聴いていると言うのも理由だけれど、楽器の再現性、ホール感、曲の最後の喝采がしっかりと像を結ぶかを聴いている。
 
と、その時に応じて多少は違う曲も流すけれど、だいたいはこの辺で判断している。特に気を付けているのは、ひとつひとつの音を拾うのではなく、曲として全体が滑らかにバランスよく聞こえているかに集中している。今まで聞こえなかった音が聞こえるのはそれはそれで面白さがあるけれど、曲全体で見た時に不自然だったりすることが多い。ある楽器が突出していたり、ボーカルに変な色が付いていたりとか、重すぎたり軽すぎたり、狭かったり音が変に離れて不自然だったり。
 
で、色々と聴いているウチにドンシャリが楽しくてもクラシックが聴くに耐えないとかは当然あって、それはもうそのイヤホンの性格づけが違うのは分かってくるのだけれど、使い分けも視野に入れて聴き比べている。
結果的に自分はフラットな性格が好きというのも分かって今の選択(カナルワークス CW-L15)なわけだけれど、とにかく曲全体の滑らかさが良いと思っている。まあ、そうなるのに300時間近くの耳慣れ(エージングも?)を要したわけだけれど。
 
実際に試聴をする際には、自分だけが長い時間を占有できるわけじゃないし、そんなことをしたら他のお客さんに迷惑がかかる。なので、一聴してダメだと思ったらすぐに止め(ほとんどがこれ)、良いなと思ったら他の曲も1曲丸々は聴かないで一部をピックアップして聴いている。まあ、他にお客さんがいなければもっと時間をかけても良いのだけれど。ちなみに、DAPやアンプでも同じことをしている。
 
まあ、現実的に考えれば試聴はあくまで試聴であって、実際に手にして長時間聴いてみないと正確に判断することはできないと思う。カスタムIEMに至っては自分の耳に合ったシェルでなければ印象が全然異なることもあるのだから。事実、できあがったL15は試聴機よりもずっと低音が多かった。逆に試聴機が少なすぎだと感じていたのが、自分の耳型に合ったものは低音がもっと多いだろう・・と想定していた通りだったのは運も良かったのだと思う。
ただ、試聴でもある程度の傾向は分かるし、安いものではないのだから何度も通って根気よく試してみるのは必要だと思う。まあ、それでも最終的には「慣れ」なんだな・・という実感もあるのだけれど・・って言っちゃうと身も蓋もないかな。(^_^;)