南瓜の馬車 〜いいわけでも許して〜

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【ネタばれあり】あなたの街のヒーロー、スパイダーマン(映画:スパイダーマン ホームカミング)

実を言うと、「キャプテン・アメリカ シビル・ウォー」を観た時に感じた、ちょっとおちゃらけたスパイダーマンが苦手だった。ということもあってか、今回の「スパイダーマン ホームカミング」は観ようかどうしようかちょっと迷っていたのだ。いつものように家人に誘われて観てみたが、観てみて正解。とても良かった。

キャプテン・アメリカ、ウィンターソルジャーたちとの戦いを経て、ヒーローとしての夢が広がったピーター・パーカー。彼もヒーローとして世界を守る一員になりたいと思い、様々なアイテムと共にヒーローとしての自覚を教えてくれるトニー・スタークから多くのアドバイスを得る。しかし彼はやっぱりティーンエイジャー。まだまだ若さ故に先走ることも多い。そんな彼が自分の街を守る戦いの中で、大きく成長していく。

今になって思えば、トビー・マグワイア、アンドリュー・ガーフィールドのスパイダーマンも同じようなシチュエーションを元に描かれている。特にトビー・マグワイアは、叔父の死と共に「大きな力には、大きな責任が伴う」と教えてくれている。そのティーンエイジャーの「若さ」を今風に描くとこうなるのだろうと思う。

ただ、大きく違うなと思ったのは、今回の「ホームカミング」では、そんな成長物語を明確に描きつつ、それでいて「重さ」を払拭したコミカルな仕上がりになっている点だろうか。映画の最初と、見終わった後ではトム・ホランドの「新生スパイダーマン」に対する感じ方がかなり変わるだろう。それは彼の「成長」を目の当たりにできるという楽しみではないかと思う。蛇足だが、「キングスマン」は好きな映画なのだけれど、最後まで主人公が子供のままなのが気になった。「紳士」になりきれていないのだ。その点、今回のスパイダーマンは良い感じでの成長がある。

個人的に気に入ったのは、スパイダーマンを身近な街のヒーローとして描いた点だろうか。彼はまだまだティーンエイジャーなのである。映像自体はいつものアトラクション・ムービーだが、ヒーローが実物大の青年と感じるところが良いと思った。観る前に思っていた、前回のキャプテン・アメリカ出演での妙な軽さが払拭され、能力的には超人でも、人間としての身近さが親しみとして転化されていると思う。それは様々な場面にも出てくる。ハイスクールでの日常場面の多さ、スーツを普通に着替えるシーン、友人と「お前がスパイダーマン?」的な誰でも身近にそういう人がいたら尋ねてみたくなるような会話などのシーンの数々が、細かく積み上げられている。こうしたシーンによって、スパイダーマンは「あなたの街のヒーロー」として感じ得ることができるのだと思う。最後のシーンで、ピーターがアベンジャーズ入りを断ったシーンはグッときた。

そして、至る所に散りばめられたコミカルなシーン。こういうシーンはやり過ぎるとくどくなるし、個人的に苦手でもあるのだが、終わってみれば適度なスパイスと感じられるし、映画全体のトーンを良い感じで構成している。こういう味付けはとても難しいのだと思う。実際のアクションだけではなく、ショットの組み合わせ、シーンの時間的構成などが巧いのだろう。

また、配役もなかなかだ。実に意外な悪役を演じたマイケル・キートン、親友役で新人のジェイコブ・バタロン。そして、シーンは少ないけれど、次ぎのMJと思われるミシェルを演じるゼンデイヤ。彼女の存在感がひときわ異彩を放っている。そしていつもよりちょっと大人っぽく真面目に演じているロバート・ダウニー・jrと運転手のハッピー役のジョン・ファブロー。ハッピーはホントにいつものハッピーなのがすごく良かった。彼は監督や脚本もこなす多彩な人だ・・なんてのはもちろんファンならご存じなのだとは思う。

こうした映画は、以前にも描いているが「アトラクション・ムービー」と個人的に位置付けているが、派手なアクションも、そしてストーリーも含めて全体的なまとまりが良い映画と言うのは意外に少ない。もちろん今までのスパイダーマンとの落差(例えばメイおばさんのイメージとか)はどうしても感じてしまうが、それでもこの作品の善し悪しを左右することはないだろう。多くの人にオススメできる映画だと思う。

追記

そうそう、一点だけ。IMAX 3Dの場合、最初のカウントダウンで「8」から3Dに変わる。が、今回はスパイダーマンオリジナルになっている。実はこの短いシーンが「今からIMAX 3Dで観る!」という気持ちの切り替えトリガーになっているのだけれど、今回はスパイダーマンオリジナルになっている。もちろん、こんなところでケチを付けるつもりはないが、出鼻をくじかれた感が微妙にあったりして・・。(^_^;)