南瓜の馬車 〜いいわけでも許して〜

猫とガジェットと映画と小説の毎日です。

MotoGP前半戦を振り返って

今シーズンはあまりレース毎の結果や感想については書かないでいた。それは単に僕の気力の問題と時間的な関係もあるけれど、主にはほとんど前シーズンと同様の結果と、ある程度予想された通りの流れになっているからだ。それは開幕戦、第二戦を終えた後に持った、以下のような感触のことだった。

  • 昨シーズンからの流れで、レギュレーション変更の流れにいまひとつ乗れないHONDAの低迷
  • それでもそこそこ走ってしまうマルケスのバランス感覚の素晴らしさ
  • YAMAHAに移籍したビニャーレスが、滑らかな走りなものの、ここ一番での速さに不安があること
  • Ducatiに移籍したロレンソが、マシンの性格の違いにかなり戸惑うこと
  • かなり安定してきたDucatiと、そもそも巧いドヴィツィオーゾが勝てるとの予想(そういう意味ではペトルッチもだいぶ良い感じだ)
  • 序盤での速さを持っているヨハン・ザルコだが、走りは旋回速度を高めるMoto2の走りで、後半でタイヤの消耗に苦しむこと(それはフォルガーも同様だが)
  • なんだかんだ言って、本番でのレース展開には一日の長(二日以上の長)があるロッシのレースが巧いこと

で、個人的には今のところ思ったような流れになっていると感じる。まあ、実際にはレーサーとピット、開発陣はもっと違うところでの困惑はあると思うが、僕自身はそう感じている。

HONDAにとっては相変わらず厳しい闘いが続いている。個人的にリア周りの処理に難儀しているように思えるが、マルケスの天性の巧さで勝ち星は挙げているものの(ペドロサの一勝も個人的には狂喜乱舞)、競り合いでの強引とも言えるアタックは随分影を潜めている。特に、ターンイン時にリアを流してアペックスに寄せる技術があまり見られていないように思う。一節にはフレーム周りもかなり弄ってきているようで、サマーブレイク開けの後半には大躍進の可能性が高いと思っている。

対するYAMAHAはマシンは良い。コーナリングの安定性、トップスピードでのパワーも負けていない。マシン自体の仕上がりは最も良いと感じる。減速からリーン、アペックスを通過してマシンを起こし、加速するマシンのよどみがない。ビニャーレスは開幕では気鋭を吐いたが、まだマシンを慎重に走らせている感がある。競り合いの勝負所で前に出ようとする気迫のようなものを感じない(失礼かも知れないが)。レース全体をマネージメントし、ゴールラインを如何に最短で駆け抜けることを考えつつも、まだマシンへの熟練度が足りないように思う。これはもう少しマシンとの対話が必要じゃないだろうか。

その点、ロッシはやっぱり巧い。マシンの状態がどうであれ、予選の順位が後方であっても結局競り合いになると前に出てくる。レース全体のコントロールはやっぱり図抜けている。ただ、前半戦では些細なミスで、それをリカバリーするために無理をして転倒するなど、ロッシらしさに欠ける面もあった。しかし、ロッシが前で競り合いをするのは、やっぱりスリリングで面白い。一番の注目ライダーであることは今でも変わらない。ゴールラインを超えるまで結果は分からない・・それがロッシだと思う。

さて、Ducatiだ。熟練度の問題でロレンソが低迷しているが、代わりにドヴィツィオーゾの巧さが光る。マシンは常に安定していて、挙動を乱さない。美しく(Ducatiの)レコードラインをトレースするドヴィツィオーゾは派手さこそ無いが、ハードブレーキングのコントロール、ストレートスピードを生かした直線を生かすコーナー処理が抜群に巧い。タイヤの消耗も少ないだろう。これはDucatiの良さもさることながら、ドヴィツィオーゾの巧さであると思う。今まで勝てなかったのが不思議なくらい、本来、ドヴィツィオーゾは巧いライダーなのだから。先日の一勝は、トラブルにまみれた昨シーズンを払拭できるほどの現状の仕上がりを裏付けるものだと思う。

個人的に大注目なのはヨハン・ザルコ。

フランス人トップライダーと言うと・・クリスチャン・サロンしかすぐに出てこないのは、僕の年齢によるものだろうが、リーンのタイミングが早く、コース幅をめいっぱい使って高速でコーナーを抜けてくる。Moto2みたいだ。その分、脱出速度での加速が苦しく、あれでは後半にタイヤが苦しくなっているだろう。事実、レースの終盤ではズルズルと後退しているのが残念でならない。明らかに他のライダーと異なるレコードラインで走るザルコ、そしてそのシャープな進入にキレの良さと気持ち良さを味わうのは僕だけじゃないハズ。あまりにそれが「ザルコの走り」であるが故に、急激にMotoGPの乗り方に変えるのは難しいと思われるが、今の状態のまま、リア周りのセッティングでどうにかならないか?と思える。それだけザルコの走りにはイナズマのごとき鮮烈さがある。個人的に今年イチオシのライダーだ。

そして「やっぱりロッシ」。予選で後方からのスタートになっても序盤で既にトップグループに食い込んでくる。もうスタートが巧いとかだけではなく、一周目の他のマシンの「捌き」が巧いとしか言えない。抜くとなったらいくつかのコーナーの前から仕掛けるポイント見据え、一発でキメル。もうね、「流石ロッシ、やっぱりロッシ」としか言えない。ロッシがまだ125ccで無茶苦茶なラインで走りつつも、飛び抜けたマシンコントロールを見せたのは伊達ではないと言ったところだろう。レーストータルとしてのマネージ面も含めた、ある種の老獪さとして駆け引きの巧さが格段にひきたつ。後半戦も「生ける伝説」として恥じない走りを見せてくれるだろう。

8時間耐久レースが行われるこの時期はサマーブレイクで、そろそろ後半戦が8月10日にBrunoで再開される。各社、この期間にマシンの熟成、場合によっては軽微な変更で臨むことになるんじゃないかと思う。個人的に期待にしたのはやっぱりヨハン・ザルコ。既にチャンピオンシップとは無関係になっているが、来シーズのことも考えれば彼の走りに一番興味がある。なんというか・・「フツーのライダーになって欲しくない」。また、もちろん僕がファンであるダニ・ペドロサの活躍も期待したいところだ。

参考までに・・半分終わってからの感想は後出しジャンケンだが、もっともチャンピオンに近いところにいるのは、Ducatiのドヴィツィオーゾだと感じている。さてどうなるか?次ぎのレースが楽しみで仕方がない。